(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)
米WTI原油先物市場は、新型コロナウイルスの感染拡大による需要減を嫌気して、このところ1バレル=40ドル前後で推移している。OPEC加盟国とロシアなどの非加盟国で構成される「OPECプラス」が史上最大規模の協調減産を実施しているのにもかかわらず、原油価格は年初の水準(1バレル=60ドル超)に回復していない。
火の車となっているOPEC加盟国の財政
供給サイドの動きを見てみると、世界最大の原油生産国である米国の状況が芳しくない。原油安に加えて、ハリケーンなどの度重なる襲来が石油会社の業績に悪影響をもたらしている。足元の原油生産量は日量約1100万バレルと、今年(2020年)3月の水準よりも約200万バレル減少したままである。
シェール企業の倒産件数は84件となり、2016年の146件を下回っているものの、その負債総額は890億ドルと過去最高となり年末までに1000億ドルを超える見通しである。2016年の原油安という試練を生き残ったシェール企業の多くが、今年の悪環境には耐えることができないのである(10月25日付OILPRICE)。
大手石油会社も例外ではない。米エクソン・モービルは、従業員の15%(約1万4000人)を今後2年で削減する計画を発表した。シェブロンも約6000人をリストラする予定である(10月30日付ブルームバーグ)。
次にOPECだが、ロイターによれば、10月の原油生産量は前月比21万バレル増の日量2459万バレルと4カ月連続で増加した。内戦の激化で壊滅的な影響を受けていたリビアの原油生産量が急激に回復しているのがその要因である。