ワシントン近郊の軍医療センターから退院したトランプ米大統領(2020年10月5日、写真:ロイター/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)

 米WTI原油先物価格は軟調に推移している(1バレル=40ドル前後)。

 10月2日の「トランプ大統領の新型コロナウイルス感染」の報道により、WTI原油価格は一時1バレル=36ドル台まで急落した。「トランプ大統領の早期回復」との観測から同39ドル台まで回復したが、原油価格が下落傾向にある状況は変わらない。

コロナ感染再拡大で原油需要が低下?

 まず需要サイドの動向だが、欧米地域で新型コロナウイルスの感染が再拡大し、原油の需要回復が遅れるとの観測が広がっている。原油の最大需要国である米国では、消費の軸がガソリンから暖房油に移りつつあるが、暖冬予想が出ており、盛り上がりに欠けている。

 世界最大の原油輸入国となった中国も、貯蔵施設の制約から今後原油輸入量は減少するとの見方が強い(9月22日付OILPRICE)。

 世界第3位の原油需要国となったインドの8月の原油処理量が前年比26%減の日量382万バレルとなるなど軟調に推移している。インドは近年「第2の中国」との期待が高まっていたが、英石油大手BPは「インドの原油需要は2025年にピークを迎えるかもしれない」との弱気の見通しを示している(9月16日付OILPRICE)。

 ロシアのノバク・エネルギー相は9月28日、「新型コロナウイルス感染の再拡大で冬季に原油需要が低下する可能性がある」との見方を示した。