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(高橋 義明:中曽根平和研究所・主任研究員)

 PCR検査などを受けずに新型コロナに感染していた者がどれだけいるか。このデータが取れれば市中感染がどれだけ広がっているかが分かり、今後の日本の新型コロナ対策を考える上で有益だ。

 11月27日に厚労省は、過去に新型コロナに感染していたことがあるかを判定する抗体保有調査の第2回を東京都・大阪府・愛知県・宮城県・福岡県の5県で12月に実施すると発表した。

 新型コロナのPCR検査を受けるのは感染者の一部にしかすぎない。濃厚接触者に関する定義や保健所の該当判断も影響するし、「普通の風邪」などと医療機関を受診しなかったり、「(仕事や旅行の)予定があって休めない」といった理由で医師から検査を勧められても受けないこともあるようだ。さらに新型コロナの場合、無症状者がいることも感染者の全体像を把握上の課題となっている。だから世界各国で新型コロナの抗体保有調査が行われている。

 一方、感染者の全体像を的確に把握するために慎重に制度設計を行わないと費用も時間も無駄になる。厚労省資料によると抗原保有調査実施経費として1次補正4億円、2次補正で14億円を計上しており、第1回調査を含めて投入される血税は18億円と見込まれる。

 本稿では海外での批評なども踏まえて今回の抗体保有調査について考えてみたい。

一般住民を対象とした抗体保有調査が必要

 感染状況を把握しようと日本でも慶応大学病院、神戸市中央市民病院(神戸市と共同)、北海道大学病院、大阪市立大学病院、奈良県立医科大学(奈良県の委託)など、いくつかの病院が外来患者を対象に抗体検査を行っている。