(写真:ロイター/アフロ)

(篠原 信:農業研究者)

 トランプ大統領は、「バイデン氏が大統領になったら(大統領は)科学者たちの言うことを聞くぞ」と発言し、支持者の喝采を浴びたようだ。

(参考)https://twitter.com/JoeBiden/status/1318357515680116737

 アメリカだけではない。日本でも、科学技術や学問に対する疑問、懐疑や非難の声が強まり、研究者たちが不安の声を上げている。反知性主義がこれほど強まって、果たして世界はどうなってしまうのだろうか、と。

 理不尽に見える動きにも、何らかの理由があるはず。アメリカや日本で、研究者や科学技術への疑問や批判が一般国民からも少なからず出てくる背景には、実は人工知能関連の言説があるのではないだろうか。

メディアが過熱 「シンギュラリティ」

 人工知能を扱う記事は、日々配信されている。特に記事中で「シンギュラリティ」という言葉によく出くわす。いつか人間の知性を人工知能が超えるのではないか、その瞬間を示した言葉だ。

 記事ではシンギュラリティを迎えたときの恐ろしい未来を予想するものが多い。人工知能やロボット技術が雇用を奪い、多くの人々を路頭に迷わせるだろう、と。人工知能やロボットが苦手とする創造的能力を発揮できない人間は仕事にあぶれても仕方がない、と言わんばかりの内容だ。

 シンギュラリティについて、実際には多くの研究者が「いつ来るのか目途が立たない」という。確かに、現在の人工知能は、かつての人工知能では実現できなかったことも可能になっている。だが、人間の知性はもっと複雑であり、深層学習という最新技術をもってしても、人間の知性を真似るのは非常に難しいのだという。