新型コロナ対応で批判の十字砲火を受けるトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)

米大統領選まで1週間を切った。前回の大統領選では下馬評を覆してトランプ大統領がヒラリー・クリントン候補を破った。各種世論調査でバイデン候補がリードしているが、そのまま逃げ切るのだろうか。「中国切腹日本介錯論」を唱える岩田太郎氏が斬る(1回目2回目

(岩田太郎:在米ジャーナリスト)

 米大統領選挙の最終投票日である11月3日に向けて、民主党のバイデン候補の選対は同陣営がトランプ大統領の最も痛いところ、最大の失策と踏んだ「新型コロナウイルス対策の失敗」を突くテレビ広告を流し始めた。トランプ政権の失策によって全米で20万人以上の死者が出たという内容の広告だ(実際のCMは以下)。

トランプ政権の失策を突いたテレビCM

 白人よりかなり高い率で死者を出した黒人コミュニティの家庭の食卓や、一般的な職場などで「座る主を亡くした空の椅子」が映し出され、バイデン氏自身の厳かに訴えかけるナレーションが以下のように挿入される。

「コロナウイルスで20万人が亡くなった。国中で死者が出た。そのため、ダイニングルームやキッチンのテーブルに座る人がいない椅子がある。ほんの数週間前、数カ月前には、お母さん、お父さん、兄弟姉妹など愛する人がそこにいたのに」

「20万人の死者を、ただの統計上の数字や背景として片付けることはできない。毎晩のテレビニュースで見る、ぼやけた片鱗ではないのだ。20万人の母、父、息子、娘、祖母や祖父、叔父、叔母、友人、職場の同僚がもはやわれわれのそばにいない。コロナのため死ぬ必要がなかった人たちなのに」

 海外からのコロナの侵入に対し、「コロナの表玄関」こと中国との人の往来は早期に止めたが、「勝手口」の欧州を放置したことで、トランプ政権は米国が感染者・死者とも世界ワーストワンの惨事をもたらすきっかけを作った。

 恐るべき伝染病であることを知りながら重大視せず、マスク着用義務化など有効策を打ち出すこともなく、多くの死者を出した責任は極めて重い。だが同時に、死者のすべての責任がトランプ氏に降りかかるかと言えば、そうでもない。