「電子契約」を導入するうえで、どのような点に注意すべきか

「電子契約」は下記の点に注意しながら導入を進めていきたい。

●紙での書類保管が法律で義務づけられている契約がある

 契約方式自由の原則により、基本契約・秘密保持契約・売買契約・業務委託契約・請負契約・雇用契約など、ほとんどの契約で「電子契約」の利用が可能だ。しかし、一部だが、消費者保護のために法律で紙による締結・交付が義務づけられているものも存在しているので注意が必要だ。

 代表的な例は以下の通り。このような契約を扱う場合、電子契約の導入の前に、顧問弁護士への確認をおすすめする。

・定期借地契約(借地借家法22条)
・定期建物賃貸借契約(借地借家法38条1項)
・投資信託契約の約款(投資信託及び投資法人に関する法律5条)
・訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引における書面交付義務(特定商品取引法4条他)

「電子契約」サービスを選ぶうえでの3つのポイント

 最後に、実際に「電子契約」サービスを選ぶうえでの3つのポイントを紹介したい。

・電子帳簿保存法に対応しているか?
 サービスの簡便さや便利さに主眼が置かれ、よくよく確認してみるとタイムスタンプ等の電子帳簿保存法への対応に機能がなく、「税法上は印刷が必要です」としているサービスも中には存在している。サービスを選ぶ際は、同法に対応しているかどうかのチェックは必須である。

・導入しやすいか?
 自社での使いやすさはもとより、相手先・契約相手にとっても使い勝手が良いかどうかも考えてサービスを選ぶ必要がある。中には、相手先はサービス使用料を無料にしているものや手順説明サービスを行っているものもあるので、よく比較検討することが大切だ。

・電子と紙の混在をカバーできるか?
 前述の通り、どうしても紙の契約書は一部残ってしまうことを念頭に置き、サービスを選ぼう。適したサービスを導入することによって、電子と紙とで別フローになるとしても、保管後はどちらも一元的に管理できるようになる。

「電子契約」は、業務効率化やコスト削減のほか、コンプライアンスを遵守するうえでも欠かせないものになってきている。また、ニューノーマルな働き方を実現していくうえでも、「ハンコ出社」といった無駄をカットして、生産性と従業員の安全を意識した行動が必要になるだろう。「電子契約」の安定した運用に向けて、関連する法令をしっかり把握しながら、自社にフィットするサービスを選んでいただきたい。

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HRプロ編集部

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