(吉田 典史:ジャーナリスト)

 70歳定年が、現実味を帯びてきた。2021年4月から、企業には70歳までの就業機会確保の努力義務が求められる。その義務は、同じ企業での継続雇用以外の選択肢を設けることも含まれる。例えば、70歳まで継続的に業務委託契約する制度やNPO活動などへ継続的に関わる制度の導入だ。

 一部のマスメディアや識者は、70歳定年を好意的に捉える。だが、65歳定年すら制度として十分には機能していないのに、果たして浸透するのか──。少なくとも、今の時期に実態に基づいて70歳定年を考える必要があるのではないかと筆者は思う。

ニーズが高まっている即戦力のベテラン

 そこでまず、2020年2~3月からのコロナウィルス感染拡大よりも前の時期を振り返りたい。主に35歳以上の転職支援サイト『ミドルの転職』(運営はエン・ジャパン)を利用する転職コンサルタントを対象にしたアンケート調査(2019年実施)では、「50代以上を採用する求人」が増えているかを尋ねると、約8割が「増えている」「どちらかと言えば増えている」と回答した。

 求人が増えている企業タイプは、約8割の回答が「中小企業」だった。需要が高い人材の特徴を尋ねた問いには「特定分野での高い専門性」「短期間で戦力になれる」などの回答が上位を占めた(下のグラフ)。

エン・ジャパンが行った「ミドルシニアの求人動向」調査、『ミドルの転職』転職コンサルタントアンケート「需要が高い人材の特徴」の結果
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