「組織開発」とは、組織に属する従業員が当事者意識を持ち、自分の手で組織を良い方向へ改善したり、改善のためのサポートを行ったりする取り組みである。人材や働き方が多様化している今、従来の「組織」に対する捉え方を見直す動きが各企業で増えてきている。本記事では、「組織開発」について深掘りながら、定義や手法、企業事例などを解説していく。

気になる「組織開発」の定義やメリットは?

「組織開発」は、オーガニゼーション・ディベロップメント(organization development)の日本語訳である。組織をよりよく変革するためのアプローチとして、1950年代に米国で創始された、組織心理学や社会心理学を源流とする理論や手法の一群を指す用語だ。

●目的

「組織開発」の目的は『組織の効果性や健全性、自己革新力を高める』こととされている。組織の効果性とは、組織の構成員一人ひとりが潜在力を発揮して目標を達成できることや環境の変化に適応し対処できることを指し、健全性は働く人のやりがいや充実感、良好な人間関係などを意味する。また、組織の自己革新力とは、組織が絶えず学び続け、外部の支援がなくても自ら変革に取り組み続ける力のことである。

 人がただ集まれば、組織として機能するわけではない。有能な個人の集まりが必ずしも効果性や健全性、自己革新力の高い組織になるわけでもない。昨今のように人材の多様化が進めばなおさらだ。組織開発とは、組織が環境に適応して自らを変革しながら、健全に、効果的に機能するよう意図的・計画的に作り込んでいく働きかけに他ならない。

●メリット

 人事部門では従来、「採用・雇用」、「配置・異動」、「評価」、「報酬」、「教育」といった人事管理上の主要機能を駆使して、諸課題の解決にあたってきた。しかし、社内外の経営環境の変化もあり、既存の手法では対応できない、以下のようなケースも増えてきた。

・個人としては優秀な人材が組織に貢献できない、チームとして力を発揮できない
・仕事の個業化が進むあまり、職場全体のモラルや一体感が不足しがち
・十分な処遇をしているはずなのに組織への愛着が弱く、離職のリスクがある

 こうした組織の人間的側面の課題にアプローチできるのが「組織開発」のメリットである。

●人材開発との違い

「組織開発」とよく対比されるのが人材開発だが、人材開発の対象が「個人」、「その人」であるのに対し、組織開発では人と人との「関係性」や「相互作用」がアプローチの対象となる。たとえば上述のように、「十分な処遇をしているはずなのに組織への愛着が弱く、離職のリスクがある」という社員のリテンションに関する課題がある場合、人材開発では、なぜ組織へのコミットメントが低いのか、その原因を当該社員本人に求め、カウンセリングや研修の提供、あるいは更なる処遇の見直しなど、個人に向けて従来の人事管理施策を講じるのが一般的である。

 しかし、それでは効果が出ないとき、組織開発では本人よりも上司や職場のメンバーとの関係性に問題があると捉えて、個人への支援による引き留めではなく、自ら留まりたくなる職場づくりのためにさまざまな働きかけを行うのだ。それが組織開発のアプローチの特徴である。