新型コロナウイルス感染症の流行などで世界経済が動揺する中で、ビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号資産)が注目を集めています。本連載では、仮想通貨の仕組みや特徴はもちろん、資産運用での活用法にいたるまで、わかりやすくお伝えします。第2回は、仮想通貨の時価総額や取引量の現状と、仮想通貨の取引をめぐる法制度について説明します。
【監修】
FXcoin 代表取締役社長
大西 知生氏
慶應義塾大学経済学部卒業後、東京銀行へ入行。ドレスナー銀行、JPモルガン銀行、モルガン・スタンレー証券、ドイツ銀行グループを経て、2018年に仮想通貨取引所のFXcoinを設立。2017年まで東京外国為替市場委員会副議長、同Code of Conduct小委員会委員長に従事。『J-MONEY』誌において2008年、2011~13年、2017年にテクニカル分析ディーラー・ランキング第1位を獲得する。経済学博士。
仮想通貨の「時価総額」は株式の約300分の1
仮想通貨(暗号資産)は、その名のとおり「暗号」なので、日本円のようなリアルな通貨(法定通貨)と違って、実際に硬貨や紙幣のような目に見えるお金があるわけではありません。しかも、実際に仮想通貨を使って買い物や支払いをする機会も現状では限られているので、たとえばビットコインが世の中にどれくらい出回っているか、想像もつきにくいところです。
実際に仮想通貨の市場規模がどのくらいなのか、データで見てみましょう。2020年9月15日時点で、仮想通貨の時価総額の合計は約36.4兆円です。このうち時価総額が最も大きい、つまり最も多く保有されているビットコインが約20.7兆円であり、仮想通貨全体のおよそ57%を占めています。
36.4兆円は、日本の2020年度の国家予算の3分の1近くに匹敵します。また、トヨタ自動車の時価総額は約23兆円(2020年9月15日時点)ですから、仮想通貨の時価総額はトヨタを上回ることになります。とはいえ、仮想通貨全体の市場規模が大企業1社の1.6倍程度というのは、やや小さい気がしなくもありません。
仮想通貨の時価総額を、世界全体の株式市場の時価総額と比較するとこうなります(図表1)。
出所:CoinMarketCap、The World Economic Forum
2020年4月なのでやや古いデータですが、仮想通貨の時価総額は、世界の株式市場の300分の1以下にとどまっています。ただし、9月までに仮想通貨の時価総額は大きく増えているので(約3800億米ドル)、この差は縮まっていると考えられます。
これを1日の取引額で比較すると、仮想通貨と株式の差はぐっと縮まります(図表2)。
出所:CoinMarketCap、World Federation of Exchanges、BIS
実は、2019年4月時点において、仮想通貨は株式の8分の1程度の規模で売買が行われていたのです。仮想通貨の流通額は相対的に少ないものの、株式と比べると、仮想通貨の方がより活発な売買が行われていることがわかります。