
シーズン中は競技で、オフはアイスショーで賑わうフィギュアスケート。特に日本人の心を掴むスポーツは、華やかさの裏で、実に多くのプロフェッショナルたちに支えられています。衣装デザイン、スケート靴やエッジの管理、舞台照明やMCなど、スポーツライターの松原孝臣さんが彼らの技術と熱意を伝える連載。ご期待ください。
(取材・文:松原 孝臣 撮影:積 紫乃)
競技を形作る重要な要素
フィギュアスケートを形作るひとつに、衣装がある。いや、形作るひとつと言ったら過少に過ぎるかもしれない。以前、ジャッジのひとりは言った。
「見映えも点数に影響することを否定はできません」
だとすれば、衣装はフィギュアスケートという競技において、重要な要素となる。採点にかかわらずとも、少なくとも、観る人の心に残る、大きな側面を持つ。だから、選手はそれぞれに衣装にこだわりを持つ。
フィギュアスケートにおいて重要な要素である衣装のデザイナーとして、目覚ましい活躍を続ける人がいる。伊藤聡美である。
伊藤の手がけた衣装を目にするのは、フィギュアスケートファンには普通のことだが、例えば2018年の平昌オリンピックで金メダルを獲得した羽生結弦のフリー「SEIMEI」、銀メダルを獲得した宇野昌磨のフリー「トゥーランドット」など、その名は知らなくとも、目にした人は多いだろう。世界大会で活躍する選手も含め日本の数多くのスケーターから依頼を受けるのみならず、海外のスケーターのデザイン・製作も手掛けている。
