菅新政権が打ち出した地方銀行と中小企業の再編策が波紋を呼んでいる。今後の急激な人口減少に備え、数が多すぎるとされる地銀を再編するとともに、競争力の低い中小企業の効率化を図るというもので、地方経済における貸し手と借り手を一気に改革する相当な荒療治である。

 今のままでは、地銀の経営が維持できなくなることは自明の理であり、改革が必要なのは間違いないが、日本経済の窮乏化が進んでいる中、一連の改革を実施すれば相当な痛みを伴うことになる。もし改革を実施するのであれば、手厚い職業訓練プログラムの提供など、ソフト面での施策を組み合わる必要があるだろう。

(加谷 珪一:経済評論家)

大手は統廃合が進んだが地銀はほとんど手つかず

 菅氏は自民党の総裁選に出馬した際、「(地方銀行は)数が多すぎる。再編はひとつの選択肢だ」と述べ、首相就任後、地銀の再編を進める考えを明らかにした。銀行を監督する金融庁ではすでに再編に向けた布陣が組まれているとされ、比較的早い時期に具体的な施策が動き出す可能性が高い。

 日本経済はバブル崩壊がもたらした不良債権問題によって身動きが取れない状況となり、これが長期低迷の原因となった。当初は、経営が行き詰まった銀行の倒産も辞さない、いわゆるハードランディングによる解決が模索されたが、社会の混乱を懸念する声が多く、この路線は採用されなかった。