新型コロナ禍が早く過ぎ去って「元の生活に戻りたい」と切望する方が多いと思います。しかし、そんな中で決して「元」には戻らないだろうと思われることも、いくつか指摘できるように思います。
例えば、ある種の会議や打ち合わせなどは、従来は「足を使うこと」に迷信がありましたが、実際、遠隔でことが済んでしまうと、その利便性は明らかです。
私たち、昭和の高度成長期に生まれ育った人間には、1970年の大阪万博、あるいは手塚治虫のまんがに描かれたような「未来の生活」で標準的だった「テレビ電話」「テレビ会議」のようなものが、これでやっと社会に定着するのだろうという見通しがあります。
技術自体は20世紀末には十分確立されており、また1995年のインターネット民生開放以降、21世紀のブロードバンド化によって、十分可能になっていた。
こうしたコミュニケーションが、社会に受け入れられるにあたって、最後の関門となっていた「アーティファクト」、つまり「人間のファクター」が、新型コロナウイルス性疾患の蔓延という、困った事態によって蓋然化されたと言えるでしょう。
先日、「これでやっと、先生がおっしゃっていた状況になりましたね」と、とある打ち合わせで指摘され、自分自身そんなふうに思っていなかったので意外に感じたのが「視聴覚リテラシー」の重要性です。
結論を先に書いてしまうと、遠隔営業、あるいは人事採用の(特に1次)面接など、今後遠隔が前提となることがほぼ見えているものについては、「視聴覚リテラシー」がある人とない人で、成功と失敗の差がついてしまうことが、まず間違いありません。
遠隔会議システムは、無防備に使っていると、営業や面接ではかなりの確率で「失敗」する、怖いものでもあります。
また、ちょっとしたコツを知っていれば、非常に有効なツールとして活用もできる。
そういう本質を私は2004年時点から、東京大学の必修カリキュラムで教授・実習していました。