(PanAsiaNews:大塚 智彦)
フィリピン南部ミンダナオ島西部のサンボアンガ半島で9月9日、南部を拠点とするイスラム教テロ組織「アブ・サヤフ」の掃討作戦を行っていた軍部隊と「アブ・サヤフ」一派による激しい戦闘が発生した。軍はテロリスト5人を殺害し、なお残るメンバーを追撃中であると9日に地元メディアに明らかにした。
「アブ・サヤフ」は8月24日にミンダナオ島南西部のスールー州ホロ島ホロ市で発生した連続自爆テロ事件で実行犯とされる女性2人、さらに自爆に使用されたとされる爆弾の製造に関わり逃走中の爆弾製造専門家ムンディ・サワジャン容疑者が所属するテロ組織で、現在フィリピン治安当局が進めている対テロ作戦の主要ターゲットだ。
(参考記事:フィリピンの街中で連続自爆テロ、実行犯は女性たち)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61906
9日の戦闘は同日午前2時ごろ、サンボアンガ・シブガイ州リムタウンで「アブ・サヤフ」のフルジ・インダマ容疑者が率いる15人のメンバーと軍部隊が遭遇して銃撃戦となった。この戦闘で「アブ・サヤフ」側の5人が死亡し、兵士2人が負傷、さらに巻き込まれた15歳の少年が怪我をしたという。
負傷者は近くの軍病院に空輸され治療を受けており、少年も命に別状はないと軍は発表している。
過去のテロ事件関与の重要容疑者追撃
今回、軍部隊と銃撃戦を演じたインダマ容疑者は、2001年に南西部パラワン州ドス・パルマス島で起きた誘拐人質事件に関与した容疑、さらに2018年に軍の検問所が爆破され11人が死亡した事件に関係した容疑で手配されているテロリストで、「アブ・サヤフ」のバシラン島地区の指導者とも言われている人物だ。
軍情報部などによると、インダマ容疑者らは6日にサンボアンガ半島の海岸に到着して警戒中の治安当局と戦闘になり、その際テロリスト1人が死亡、残るメンバーは沿岸部のマングローブ林に身を隠すなどして逃走していた。その後消息が一時不明になったが、9日に再び治安部隊が発見して銃撃戦となったという。
銃撃戦の後、残るテロリスト10人は海岸沿いに逃走しているとみられ、空と海からも軍が捜索を続けている。軍関係者は「決して手を緩めることなく、テロリストを追い詰める」と強い決意を地元メディアに対して示している。