「毎月分配型のファンド」の魅力? 魔力?

 ということで、かつて一世を風靡したファンドも、今は昔という印象が拭えなくもありません。しかし、ある金融機関(=投資信託の販売会社)の販売件数ランキングのページを見ると、直近1か月で、上位10本のうち、「毎月分配型のファンド」が2本、ランクインしています。
 評判はともかく、「毎月分配型のファンド」は根強い人気を誇っているようにも感じます。

 筆者は毎月分配型ファンドについて、ベストな選択ではないにしても、(=いや、むしろ、パフォーマンスさえきちんと挙げることができれば、結果さえ良ければ)悪いファンドだと思ったことはありません。

 ところで、毎月分配型ファンドは、積立投資というよりも、退職金のようなまとまった資金による一括投資の場合がほとんどだと思われます。
 まとまった資金で「毎月分配型のファンド」に投資し、そして、毎月決算がありますから、お約束(=保証)ではないにしても、毎月、分配金を受け取ることができるようになっています。

 「タコ足ファンド」と揶揄されているのも知らずに、「この分配金が楽しみなんですよね♪」と語る人の、何と多いことか。

 預金通帳に分配金が振り込まれている旨の記帳があると、「安心する」とか「お給料と同じ感覚になる」と言う言葉が、いまだに筆者の耳に焼き付いています。
 お勤めをリタイアされ、年金生活に入った人にとっては、国の年金は2カ月に1度ですし、企業年金は3か月に1回という規約もあったりしますから。「毎月」というのは魅力なんでしょうね。

 しかし、この分配金を「受け取らない」という選択肢があるのをご存知でしょうか?

投資信託の分配金の2つの選択肢、一般口と累投口

 毎月分配型ファンドに限らず、ファンド(=投資信託)に投資する時に、分配金について2つの選択肢が設けられている場合があります。
 選択肢のうち、一つが分配金を現金で「受け取る」前提の「一般口」
 もう一つが分配金を「受け取らず」に、分配金を同じファンドの買い増しに充てる「累投口(=自動継続再投資)」です。

 なお、NISA口座の場合は、証券会社や金融機関などの販売会社によっては「累投口は選択できない」旨の規約を設けている場合があるようです。
 というのも、仮にNISA口座にて累投口でファンドに投資をすると、「分配金による同じファンドの買い増し」によって、NISA口座の非課税枠を超えてしまうことがありうるからです。
 また、同じく販売会社によっては、一般口で投資したファンドの運用を続けたまま、つまり売却などをせずに、累投口に変更することができる場合もあれば、できない場合もあります。

毎月分配型ファンドでも積立投資と同じ妙味を得る

 さて、先述の累投口で、毎月分配型ファンドに一括投資すると。
 (繰り返しになりますが、分配金は頻度および額ともに保証はありません)
 分配金によって、積立投資と同じ妙味を得ることができる場合があります。

 積立投資と同じ妙味とは、投資における「損益分岐点の引き下げ」です。
 拙稿の第17回を、あわせてご笑覧ください。

  投資時 売却時 差し引き
基準価額 3,992円 1,783円 ▲2,209円
キャッシュ 300,000円 308,140円 +8,140円
数量(口数) 787,497口 1,728,212口 +940,715口

 さて、上の表は筆者が保有していたファンドの実績です。
 実績ですから、購入時手数料や信託報酬といったコストや税金などは織り込み済みです。

 投資時と売却時を比べてみると。
 基準価額は半額以下に、大きく落ち込んでいます。
 その一方で、数量の方は倍以上になっています。
 つまり、基準価額の下落は、数量を増やすことでカバーしたということができそうです。
 では、この数量が増えた理由は?と問われると、先述の「分配金による同じファンドの買い増し」です。
 なので、キャッシュ(=現金)ベースで見ると、何とプラスのパフォーマンスです。

 基準価額が大きく落ち込んでいるのに、プラスのパフォーマンスでキャッシュを得ることができた。
 これこそが、まさに「損益分岐点を下げる妙味」です。

 ちなみに。
 筆者はこのファンドが毎月分配型ファンドだから投資したのではなく、投資対象や投資方針を吟味して選んだのですが、決算の頻度が「毎月」しかなかったのです。
 なお、売却のタイミングは今年の2月の半ばです。今、振り返ると、何とも絶妙なタイミングでした。