先月は体調を崩し、前回から随分時間が経ってしまった。その間に年が明け、米国ではいよいよオバマ新政権が動き出した。米国民の歓喜で迎えられた新政権だが、早くも景気対策をめぐり議会共和党との対立が先鋭化。閣僚人事の不手際が重なり、国民期待感の異様な高まりの反動もあり、「就任後100日のハネムーン」気分が今にも吹き飛んでしまいそうな様相を見せている。

【図解】ダボス会議

各国要人が集結、
ダボス会議
AFPBB News

 1月末には、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開催された。各国から官民の指導者を集める場として、近年一気に存在感を増したダボス会議。だが、自ら謳歌してきたグローバル市場経済が金融危機で根底から揺さぶられ、さながら世界同時不況の突入前夜という状況となり、会合の雰囲気は一変した。米国の政府高官や金融機関の首脳はほとんど姿を見せず、ややもすれば危機の原因をめぐる非難合戦と化し、難局打開に向けた方向性は見いだせなかった。

 昨年の福田康夫首相(当時)同様、麻生太郎首相が国会日程の合間を縫い、滞在数時間の強行日程で参加。「私の処方箋=世界経済復活に向けて」と題する演説もこなした。

 しかし、果たしてどこまでアピール効果があったのか。正直なところよく分からない。日本のメディアは「処方箋」に新味がなかったと批判する。その一方で、首相は途上国支援の具体策など、現時点で他の先進国は真似できそうにない政策に言及しているのだ。もっと高く評価されてよいのに、そうはならない。首相自身というより、官民問わず日本人の国際会議への不慣れとPR下手のせいだろう。

 滞在数時間では、どんなに頑張ってもやれることは限られる。確かに「どうしても出席すべきセッション」に参加するだけなら、それで良いかもしれない。しかし、せっかく飛行機で往復30時間近くかけて訪れるのに、フォーマルな会議で用意されたスピーチをするだけではもったいない。

 ところが、国際金融関係者の端くれとして筆者がウオッチしている、年2回の国際通貨基金(IMF)や世界銀行の合同会合でも、日本の財務相はだいたい先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)だけ、せいぜいIMFの委員会に顔を出す程度でそそくさと帰ってしまう。

 確かに、ダボス会議は何かが決まるという会議ではなく、参加しなくても別に困らない。IMF・世銀総会なども、それ自体は大臣が欠席しても悪影響はまずないだろう。

 しかし大事なのは、その場に世界中の指導者やカウンターパートが集まるということだ。つまり、普段なかなか話のできない人たちと会い、その意見や要望に直に触れ、また日本の考えを伝える貴重な機会なのだ。

竹下元首相、片っ端から要人と面会

 首相候補としての「人脈づくり」という狙いも当然あったのだろうが、故竹下登元首相は蔵相当時、東京あるいは出張先を問わず、面会依頼があれば過密スケジュールを縫って、片っ端から外国の要人と会っていたと聞く。

 対照的に、近年のIMFやG7を担当している財務相や財務省事務方に、世界の財政・金融当局者が集う貴重な機会を活用しようという考えがどこまであるのか。筆者はいささか疑問に思っている。

 少し前までは、途上国を中心に「日本の大臣や高官に会い、話をしたい」という声を少なからず聞いたものだが、最近はそれほどでもない。「どうせ頼んでも『時間がない』と言われるだけ」とあきらめているのか、それとも往年の勢いのない日本への関心が薄れてしまったのか。