まずiDeCo。悩むのはその後からでいい
──投資を継続するためには、どのような工夫が必要だと思いますか。
奥野 やはり自動的に収入を投資に回せる仕組みを作るのがいいと思います。手を付けなくても生活に困らない資金は、隔離して投資に回して、20~30年したら投資元本が倍以上になっていた、というのが理想です。
──やはり積立投資でコツコツやるのがよさそうですね。
奥野 そう。だから当社のファンドは積立投資専用なんです。
昨今では、つみたてNISAやiDeCoなど、積立投資の非課税制度も充実してきましたし、投資を始める環境は整っています。
奥野 すばらしいことです。特にiDeCoは絶対に使うべきですね。掛け金が全額所得控除されるわけですから、こんないい制度はありません。よく個人投資家から「資産形成、何から始めればいいですか?」と聞かれますが、「とにかくiDeCoを始めましょう。いろいろ悩むのは、その後!」って答えています(笑)。
運用哲学を理解していない人には任せられない
──ちょうど個人投資家のお話が出たところで、最後にぜひお伺いしたいことがあります。貴社は、個人投資家とのコミュニケーションや情報発信に非常に力を入れている印象があります。運用会社にとって、個人投資家とのコミュニケーションはどうあるべきでしょうか。
奥野 運用哲学やファンドのコンセプトに共感してくれる人が投資してくれるのが、アクティブファンドの本来のあり方だと思います。だから当社の哲学やコンセプトをちゃんと理解していない人や、伝えられない人に、投資家とのコミュニケーションを任せたくありません。
それにいまなら個人投資家とも簡単につながることができます。そういう時代になっているにも関わらず、相変わらず投資家との接点を販売会社に任せっきりというのは、投資家に向き合っていないと思います。
最近もZoomを使った個人投資家とのコミュニケーションを行いました。
ジャズピアニストの小曽根真さんが『Welcome to Our Living Room』という名前で、4月9日から5月31日まで毎日自宅でのピアノ演奏を動画配信していて、私もたびたび視聴していました。こういう先行きが不安な時に毎晩、何千人もの人がリアルタイムでつながるということが、どれほど人の心を癒すかということを、動画を観ながら痛感しました。
「コロナ禍の影響で不安になっている当社ファンドの受益者もたくさんいるはず。僕らがいま何を考え、何をしているか、ちゃんと説明する責任がある」と思い立ち、同じように動画配信を始めました。
──すばらしい取り組みです。しかも思い立ったらすぐやるというのがいいですね。
奥野 短期的には僕らのファンドも値下がりしましたからね。そういう時に紙ペラ一枚をウェブサイトにアップして終わりというのも味気ないですから。SBI証券も楽天証券も賛同してくれて、すぐに動いてくれました。
──そこで何を伝えたのですか。
奥野 改めてファンドのコンセプトや、僕らがいま何を考えているかなどを中心にお伝えしました。あとは参加者との質疑応答です。正直にいうと「もしもピアノが弾けたなら……」って思いましたね。でも僕はピアノが弾けないから(笑)。
──ははは(笑)。今後もそういう機会を増やしていくつもりでしょうか。
奥野 もちろんです。もともとリアルでは年に一回、受益者を集めた年次総会を開催していました。でも今回、オンラインによるコミュニケーションを行ったことで、オンラインならではの優位性を実感しました。
──物理的な距離とか関係ないですからね。いつかMonJaでもイベントやオンラインを使った企画などをやっていきたいと思いますので、その時はぜひお声がけさせてください!今日はどうもありがとうございました。
(注)インタビュー内容は、取材日時点(2020年6月16日)の投資判断および見解であり、現在の投資判断・見解とは異なる場合があります。