連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第8回。そこはまるで戦場だった――ボランティアでニューヨークにかけつけた集中治療医、コロラド大学集中治療フェローの淵田幹太氏が語る医療崩壊の現実。讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)の対談記事・第2弾をお届けする。
もし日本で同じことが起こったら?
日本では、4月半ばに新型コロナウイルス感染症の感染拡大がピークを迎えましたが、かろうじて医療崩壊は免れました。一方、その1週間ほど前、感染爆発したニューヨークでは、医療のキャパシティを超える事態も起こっていました。
前回のニューヨーク・マウントサイナイ病院の野本先生につづき、医療崩壊したニューヨークの病院にボランティアとして身を投じたコロラド大学集中治療フェローの淵田幹太先生にお話を伺いました。
淵田 幹太
2013年3月、慶應義塾大学医学部卒。自治医科大学附属さいたま医療センター集中治療部、インディアナ大学麻酔科レジデント(研修医)などを経て、2020年7月よりコロラド大学集中治療フェロー(専門研修医)。
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淵田 1月。新型コロナウイルス感染症は、アメリカ国内でもぱらぱらと症例が出始めていました。私が所属していた北カリフォルニアの麻酔科医グループには中国出身の麻酔科医がいて、彼は早い段階から警鐘を鳴らしていたのですが、私にはまだ実感が湧きませんでした。
3月上旬にワシントン州シアトルで感染拡大し、危機感が一気に高まりました。少し遅れてニューヨークでも感染者が急激に増え始め、3月7日にニューヨーク州のクオモ知事が緊急事態宣言。22日にはロックダウンが始まりました。私が暮らしていた北カリフォルニアでの感染拡大も深刻な状況でしたが、幸い、勤務先の病院には大きな影響はありませんでした。
「ニューヨークの友人医師たちが過酷な医療現場に立たされている。自分にできることは何かないのか?」