現金のリスク

 「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は「積立投資への誤解」をテーマに、投資信託と外貨建て生命保険の例を取り上げてみます。

同じ期間、同じ商品への積立投資でも差が生じる

 冒頭、新型コロナウイルス感染症により亡くなった方々にお悔やみ申し上げます。また、闘病中の方には一日も早い快癒を祈念申し上げます。

 さて、本題に入ります。「積立投資への誤解」が本稿のテーマです。

 以下の表は、ある2種類の条件で積立投資を行った場合、どれだけの利益を得られるかというシミュレーションです。

  プランA プランB
① 投資信託の名称 日本株ファンド 日本株ファンド
② 投資額の合計 1,530,000円 1,514,678円
③ 基準価額の平均 9,900円 9,900円
④ 取得口数の合計 1,794,518口 1,530,000口
⑤ 損益分岐点 8,526円 9,900円
⑥ 6月5日時点の基準価額 16,223円 16,223円
⑦ 6月5日に全てを換金(約定) 2,911,246円 2,482,119円
⑧ 投資額の合計に対するパフォーマンス +1,381,246円 +967,441円
⑨ ⑦÷②×100 190.27% 163.87%

*プランAとプランBは、本稿のために便宜上、設定しました。
①投資信託の名称:実在する投資信託ですが、ここでは仮称です。プランAもプランBも同じ投資信託です。
②投資額の合計(プランAの場合):2009年1月30日~2020年4月30日まで、毎月の最終営業日に、1万円ずつの積み立て投資を12年9カ月間行っています。ノーロード(=購入時手数料がない)です。
②投資額の合計(プランBの場合):2009年1月30日~2020年4月30日まで、毎月の最終営業日に、1万口ずつの積み立て投資を12年9カ月間行っています。ノーロード(=購入時手数料がない)です。
③基準価額の平均:②の期間中の、毎月の最終営業日の基準価額の平均(算術平均)、すなわち毎月の積み立て投資を行った日の基準価額の平均です。なお、基準価額は実在する投資信託の運用会社のサイトから引用しています。
④取得口数の合計:②の期間中、毎月の積立投資によって得た、投資信託の口数を合計したものです。
⑤損益分岐点:「②投資額の合計」÷「③取得口数の合計」×10,000で計算しています。
※どちらの投資信託も、基準価額を用いていますので、信託報酬は織り込み済みですが、分配金の再投資は行っていません。
⑥⑦:「6月5日」としたのは、本稿執筆の時点で最も近い営業日という以外に意味はありません。4月30日まで積立投資を行い、投資信託の状態で取っておき、6月5日に全て換金(=解約)したというプロセスです。
⑦はプランAおよびプランBそれぞれ⑥×④÷10,000で計算しました(円未満は切り捨て)。
⑧パフォーマンス:プランAおよびプランB、ともにそれぞれ⑦から②を差し引いて算出しました。

 プランAとプランBは、実は両方とも、同じ投資信託を同じ期間、積立投資を行っています。なので、③の「基準価額の平均」や⑥の「6月5日時点の基準価額」は同じです。が、⑧の「パフォーマンス」をはじめ、ほかの数字は異なっていますね。

 どうして、このような違いが生じたのでしょうか?