(吉田 典史:ジャーナリスト)
三井住友海上火災保険(東京都千代田区、約1万9000人)は新型コロナウイルス感染拡大の直後から、社員の安全確保や事業の安定的な継続をするための施策を次々と打った。大きな柱の1つが、全社員を対象とした在宅勤務制度だ。現在まで大きな混乱や問題が生じることなく進めているようだが、それを可能にしたのが、2016年10月から全社で取り組んだ働き方改革だった。
特に改革の中心を担うのが、マネジメント層である部課長だ。部課長が最前線で試みる改革を続けたことにより、各職場の組織力が強くなりつつあるという。今回はそれが迅速に、柔軟に危機を乗り越える原動力となったのではないか。そしてこのミドル層と組織力が同社の強力な武器であり、多くの会社が弱点として抱え込んでいるものなのだと筆者はあらためて思う。今回は、そこに焦点を合わせた取材を試みた。
緊急事態宣言を受けて在宅勤務制度を改正
在宅勤務制度は2016年10月に、柔軟な働き方を実現するための一環としてトライアルから始めた。2017年4月に正式にスタートしてからは対象は基幹社員(主に総合職)1万5000人程で、2020年1月までに延べ1万人が制度を活用した。職種や配属部署、入社年次、役職に関わらず、全員が週に2日まで可能だ。