(岡村 進:経営コンサルタント、人財アジア代表取締役)

(前編はこちら:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60871

 テレワークを一時的なブームにとどめず、永続的な実りある習慣として定着させるために、必要なことは何か?

 私が15年前に外資に勤め始めたとき、皆当たり前のように家でも仕事していた。時差のある世界の同僚と協働作業ゆえ、夜中に自宅でメールの2、3やり取りを行っておくと、翌朝最終回答を受け取って日本ですぐ作業を完結できるのだ。これで一日、節約できる。

 社内ネットワークにアクセスするために、刻々と数字の変わるパスワードを表示するトークンを渡された。トークンは日本でもいまは珍しくないが、当時の私には、洗練されたプロセスに新鮮な驚きがあった。

 逆にパソコンは支給されなかったが、文句を言うものはいなかった。早く良い仕事をしたい、評価されたい、ビッグになりたいとの夢があるから、新入社員の不満の所在は、「もっと早くトークンを支給してほしい」というスピード感にあった。目的意識の大事さをあらためて痛感させられた。

 日本企業は技術論より前に、もっと夢を語るべきだ。デジタライゼーション導入により実現したいビジネスの目標は何か? テレワークにより個々人が手に入れられる夢の働き方とはいかなるものか? 目的なき改革では、またぞろ頓挫の憂き目にあうだけだ。

 かくいう私は、コロナショックにより増加したオンライン研修をきっかけに、少しわくわくした気持ちになっているので披露させていただきたい。

オンライン会議のメリット

 社会人向けにビジネス予備校を始め数年経つ。福岡校と東京校の生徒のつながりを密にすることに意を用いてきた。生徒の数を限定し、まだ現役生と卒業生を合わせても100数十名程度の小規模集団を維持しているが、それでも卒業して少し仲間との距離が広がる人の存在が気になり始めていた。

 そんななかOBOG会の幹事団が、卒業生を迎えて行う大事な今期初会合を、あえてオンラインにて実施しようと提案してくれた。そして懇親会をやらない分、資産運用の先生をお招きして、市場動向をアップデートしてもらうという。超ショートノーティスにも関わらず、東京・福岡両拠点に限らず、転勤先の名古屋・大阪など広域からすぐに60名弱が集まった。私にとって何よりも嬉しかったのは久しぶりに見る顔がたくさんあったとことだ。

 こうして生徒に教わったオンライン研修の主催者側のメリットは、

・時間やコストを節約できる
・決めてから実行までのリードタイムが短い
・それゆえに何回も試行錯誤しながら改善していける
・ゲストスピーカーの負担を軽減できるのでお願いしやすい

 等々複数存在する。

 中でも最大のメリットは、参加者の心持ちから生じるものだった。心理的ハードルが下がり、小さな勇気さえあれば、久しぶりに会合に参加する気になるのがよくわかった。多様性の生み出す価値を大切にしているので、異なる価値観を持つ人財の参加が増える意義はとても大きい。アフターコロナの世界でも、二回に一回はオンライン開催したらどうかと言っている幹事に賛同する気持ちになっている。早速集会の頻度をあげて、来月はIT・オペレーションの外国人エグゼクティブに英国からオンライン参加してもらう段取りをととのえたところだ。