解決の鍵は、フリーランスの活用や給料を減額した「リモート正社員」にあり
まずは、会社側が、出社する社員と、リモートで作業する社員に分けて、給与体系も分けてしまう方法です。会社員の多くの方は「今の給料のままでリモートの正社員が理想」と思っていると思いますが、それは前述した理由からも経営上難しいと思います。
実際に、リモートでできる仕事であれば、既に私のようなフリーランスや外注業者はたくさんいますから、正社員の半分の値段でも「ありがたい」と引き受けることでしょう。会社側も「リモート作業でさぼってないかな」と社員を管理したり心配したりする必要もなくなりますし、何より正社員にかかる会社負担分の社会保険料が減ります。社会保険料は会社のコストの中でも大きな負担の一つですから、想像以上に経費の負担は軽くなります。リモート作業にこうしたフリーランスや外注業者を積極的に登用することも、会社を潰さない方法の一つです。
もし現状の職場環境を極力変えないで人事改革をしたいということでしたら、たとえば「今の給与の半額」で雇用枠と作業を集約させて、リモートの正社員の社内募集をかける、というのも一考ではないかと思います。子育てや介護のある人などが、ライフステージに合わせて、雇用形態を行ったり来たりできれば、それはそれで理想的ではないかと思います。
また、社員側の立場に立ってみると、そこまで特定の会社にこだわりはないという人は、私のように、これを機に「フリーランス」に挑戦してみる、というのも人生の選択肢としてありではないかと思います。
そもそも私がフリーランスになったのは、割と作業が速く終わるほうでしたので、「もし一人で3社掛け持ちして仕事ができたら、1社あたりが今の給料の半分の契約金額でも、トータルしたら今の報酬より増えるし、反対に雇用主の負担は半分で済むからWIN-WINだなあ」といつも思っていたからです。今回の在宅勤務で、会社に通うよりも「集中できた」、「やる気が出た」、「全然寂しくない」という人は、フリーランスに向いていると思います。
たとえばフリーランス宣言をして今の会社で業務委託としてリモートの仕事を受けつつ、知り合いのベンチャー企業でまた別の仕事を業務委託で請け負う、という生き方もいいのではないでしょうか。本人にとっては1社に頼らない生き方としてリスクヘッジになりますし、会社側も、1ヵ月の10日から半月分くらいの仕事がある、という時に、こうした人がいれば費用的に助かります。
私も「3年やってダメだったら、また会社員として1から頑張ろう」と思って始め、もうすぐ10年目に突入します。一度きりの人生ですから、自分らしく働ける環境を模索するのも「withコロナ」、「アフターコロナ」のライフプランの一つなのではないかと思います。
「どうしたら自分にも会社にも利益がもたらされて、充実した毎日を過ごせるだろうか」。働き方改革を受け身ではなく積極的にとらえて、皆さんにはこれからの時代をたくましく生き抜いていって欲しいと思います。
著者プロフィール 流創株式会社 代表取締役 経営コンサルタント/作家 前田 康二郎 数社の民間企業で経理総務、IPO業務、中国での駐在業務などを経て独立。現在は「フリーランスの経理部長」としてコンサルタント活動を行うほか、企業の顧問、社外役員、日本語教師としての活動、ビジネス書やコラムの執筆なども行っている。著書は『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』のほか、『スーパー経理部長が実践する50の習慣』、『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』、『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』『経営を強くする戦略経理(共著)』、『スピード経理で会社が儲かる』、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』、『自分らしくはたらく手帳(共著)』など多数。節約アプリ『節約ウオッチ』(iOS版)も運営している。
|