「WHOから締め出されても、台湾は貢献することを諦めたことはありません」

 こうした状況の中、WHOのトップの発言に即座に反応し、台湾の思いを果敢に訴えかけた林さんの行為には、多くの台湾市民が共感を示したかっこうだ。林さんの動画での反論の日本語字幕概略は次の通り。

<親愛なるテドロス博士、私はVivi Lin(ヴィヴィ・リン)、英国で伝染病を学ぶ台湾の大学生です。

 今日あなたについて聞きました。いま世界で最も影響力のあるWHO指導者が、記者会見で台湾に対する事実に反する非難を行ったことに、私は驚きと失望を禁じえません。

 台湾と英国の多くの医療衛生NGOで活動している一人の学生として、台湾の外交官がかつてアフリカの人々に対して民族や文化、肌の色で否定的評価を下したことがないことは、この私が断言できます。

 私は、現在ネット上であなたがWHO事務局長の職を辞任するよう多く署名が集まっていることを知っています。ですがそうした要求は、あなたの民族や肌の色、あるいはアフリカの人々に対する差別に基づくものでありません。

 台湾はずっと、国際社会における医療衛生へ貢献することに非常に努力してきました。私たちもまた、この世界的な伝染病との戦いにおいて世界と同じ立場に立つことをずっと望んでいます。

 私たちがWHOから締め出されても、台湾が自ら貢献することを諦めたことはありません。

 台湾は今回のCOVID19(*新型コロナウイルス感染症)の防疫において傑出した成果を上げており、それは世界が知るところです。

 私たちに予想以上のリソースが出たときは、それを惜しみなく米州、欧州、アフリカの友邦、そして現在ウイルスの影響を受けているその他の国々と分かち合っています。(中略)

 私は「健康はあらゆる人々に認められた基本的人権である」と信じています。

 すべての人々の健康、すべての人が締め出されないことは、WHOが固く守るべき核心的な価値です。

 あなたが一人の公衆衛生専門家としての信念と、事務局長を受任したときの誓いである「政治ではなく、世界の人々の健康を第一とする」を忘れないでください。

 世界は今、この時代において最も厳しい健康の危機に瀕しています。そして台湾はすべての人々の健康を気に掛け、さらに助けとなることを願い、今まさに助けています。

 台湾は進歩的価値を信じる国家であり、台湾人は常にダイバーシティを尊び、それと共にあります。

 私たちはあなたの民族、文化、あるいは肌の色に基づいて疑問を呈したことはありません。

 今ここに、私と私が熱愛する国家と台湾の人々は、あなたが4月8日に行った事実に反する非難に関し、謝罪を求めます! ありがとうございました>(和訳:Kazuyuki DEGUCHI)

(参考)テドロス博士への公開メッセージ(日本語字幕付き)https://www.youtube.com/watch?v=EKh6qiAGDfA