(ジャーナリスト・吉村剛史)
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が、「台湾から人種差別的な中傷を受けた」などと記者会見で訴えたことに対して、台湾の捜査当局や蔡英文総統らが「根拠がない」と反論、台湾でWHOに対する不信感と反発が広がっている。
こうした中、英国で学ぶ台湾人女子医学生が、動画投稿サイトで「私たちはあなたの民族、文化、あるいは肌の色に基づいて疑問を呈したことはない」などとテドロス事務局長を糾すメッセージを公開したところ、7日間で170万回以上再生されるなど、大きな反響が寄せられている。4月14日には日本語の字幕も添付され、視聴した多くの日本人からも「台湾の若者のけなげな姿勢に心動かされた」「WHOトップへの懸命の訴えに涙腺崩壊」などと感想が寄せられている。
台湾を名指し批判はじめたテドロス事務局長
動画をYouTube上に投稿した女子医学生は台湾・宜蘭出身のVivi Lin(ヴィヴィ・リン=林薇)さん(21)。オランダに続き、現在は伝染病について学ぶため英スコットランドに留学中で、複数のSNS上で多数のフォロワーを持っている。
投稿動画ではこれまでも英国の防疫政策をはじめ、英語学習や、保健関連の話題、留学先での体験談などが人気で、毎回数千から数万回再生されているが、WHOのテドロス事務局長が4月8日の記者会見で台湾を名指しし、「インターネット上で、人種差別的な中傷を受けている」などと非難したことに対し、林さんは翌9日に、投稿動画で反論した。
「私は、現在ネット上であなたがWHO事務局長の職を辞任するよう多く署名が集まっていることを知っています。ですがそうした要求は、あなたの民族や肌の色、あるいはアフリカの人々に対する差別に基づくものでありません」「台湾はずっと、国際社会における医療衛生へ貢献することに非常に努力してきました。この世界的な伝染病との戦いにおいて世界と同じ立場に立つことをずっと望んでいます。私たちがWHOから締め出されても、台湾が自ら貢献することを諦めたことはありません」などとテドロス氏へのメッセージを明瞭な英語で語ったところ、再生回数はたちまち170万回を超え、10万以上の高評価を獲得。台湾では各メディアも大きく報道し、14日には日本人翻訳者の協力で、同動画に日本語字幕が添付され、日本でも注目された。