(安田 峰俊:ルポライター)
1月中旬以来、新型コロナウイルス関連のニュースが全世界を覆っている。最近はイタリアとアメリカの事態の深刻化でやや注目が薄れた感があるが、韓国における感染拡大も「カルト宗教による感染爆発」というインパクトが強い話だった。新宗教「新天地イエス教証しの幕屋聖殿」(以下、新天地教会)の信者内で感染が広がったのである。
新天地教会は、韓国大邱市近郊出身の李萬熙(イ・マンヒ)によって1984年に創設された、キリスト教系新宗教だ。教義のなかで李萬熙をイエス・キリストの再来に位置づけていることから、主流派のキリスト教からは「異端」であるとみなされている(新天地教会側も他のすべての教会はサタンに属するものであると主張しているが)。全世界の信者数は約10万~22万人と諸説あり、日本でも東京都内をはじめ複数の拠点が存在する。
新型コロナウイルス関連の話では、当初、新天地教会が情報を隠していたうえ、信者にマスク不着用を求めていた、体調不良でも礼拝参加を強いた、感染の拡大が教団のみの責任にならないように他のキリスト教派の集会に信者を潜り込ませていた――と、問題点がすでに数多く報じられている。新天地教会は感染爆発が明らかになってからも、当局にニセの信者名簿を提出していたといい、かなり悪質だ。
社会的批判の高まりを受けて、3月2日には「キリストの再来」であるはずの教祖・李萬熙が報道陣の前で土下座。対してソウル市がなんと李萬熙を殺人容疑で告発するという騒ぎになった。
3月17日時点で韓国国内の新型コロナウイルス感染者は8413人だが、そのうち新天地教会がらみの感染者は4363人にも及んでいる。