3月31日、中国の国務院新聞弁公室が「2010年 中国の国防」を公表した。中国は1998年より隔年で国防白書として「中国の国防」を公表しており、今回は都合7回目となる。

 2006年版までは、その年のうちに公表されてきたが、2008年版は年を越して2009年1月の公表であった。2010年版はどうかと注目していたところ、公表は遅れに遅れた。

 1月の胡錦濤訪米前、2月初めの春節の前、さらに3月初めの全国人民代表大会(日本の国会に相当)開催前と、公表のチャンスは何度もあったものの、いずれも期待は空振りに終わった。過去に例のない「遅れ」ぶりで、何か公表できない事情でもあったのかと詮索したくなるほどであったが、実際、いろいろ事情があったのだろう。

白書の情報量が減っているのは米国を強く意識したから?

 しかし、何事もなかったかのように「2010年中国の国防」は3月31日に公表された。公表が遅れた説明などもなかった。

 そして、その日、国防部スポークスマンは、陳炳徳総参謀長の5月訪米を発表した。今年1月にゲーツ国防長官が訪中した際に出された共同声明では、今年前半における総参謀長の訪米が明記されていたが、5月で確定したようである。ただし具体的日程の発表はまだのようだ。

 こうしてみると、今回は、中国の国防白書の公表が米中軍事交流とセットで行われている印象がある。

 ゲーツ訪中時の「J-20」ステルス戦闘機の試験飛行、その後の「空母キラー」東風21D対艦弾道ミサイルの配備開始報道など、中国が日本を抜いて米国に次ぐGDP世界第2位の大国に躍り出たことを背景に、米国への軍事的対抗意識を公然化させてきている。その文脈に従えば、今回の国防白書は米国を強く意識したものと考えざるを得ない。

 それゆえに(と、あえて表現するが)、今回公表された中国の国防白書は明らかに情報量が減っている。

 中国の国防白書は毎回、構成が異なるため、各年度版での内容の比較が難しい。2008年版は陸・海・空・第二砲兵の各軍種をそれぞれ独立した章立てで紹介しており、それなりに情報の公開という点で進歩の跡が見られた。