しかし実際は、そうではありません。実は日本の企業数は20年前と比べると約100万社も減っています。一方で、大学生は20年間で約7万人増えています。30年前と比べると80万人以上も増えています。また、生産年齢人口も20年間ほぼ横ばいです。つまり、日本に働き手は十分にいるのです。では、なぜ現在のような人手不足感があるのかというと、好景気と働き方の多様化が原因です。単に企業業績の拡大により、求人数が増えているというだけなのです。
新卒採用は、近年の終身雇用時代の終焉やグローバル化の進展により働き方の多様化が進んでいます。自己実現のために複数社経験したい人もいれば、安定的に長く1社に勤めたい人もいます。先ほどお伝えしたように、学生数は増加しているので、きちんと学生のニーズと求人が合致すれば採用はできるはずです。
一方で、中途採用は全体の比率からするとまだまだ転職者数が少ない状況です。転職者は徐々に増えているものの雇用者全体の1割程度しかいません。つまり、そもそも求人に応募する人自体が少ないのです。
今年、採用活動を成功させるために必要なアクションとは
では、2020年に採用活動を成功させるためにはどのようなアクションをとればよいのでしょうか。
まずは、全体的な問題として採用の戦い方が変わったことを認識するべきです。現在は以前と比べると好景気です。有効求人倍率もバブル期を超えています。数年前のように求人を出せば入社してくれる時代ではなくなった、ということです。
また、働き方の多様化により、新卒の大企業志向は弱まっています。これは、ベンチャーや中小企業にもチャンスがあるということです。ただし、新卒生の価値観に合う企業でなければ入社してくれません。ニーズを把握して、きちんとターゲット像を設定したうえで自社を売り込む採用手法が今後の中心になるでしょう。
一方、中途採用の場合は先述のとおり、転職者自体がまだまだ多くありません。また、有効求人倍率の高まりは、どの企業も優秀な人材を欲していることの表われでもあります。そもそも市場に求職者がいないのですから、他社からスカウトするしかありません。
つまり、2020年の採用活動は、新卒・中途ともにスカウト中心で行うべきです。大企業の場合は大規模な求人広告や宣伝とともにスカウトを活用すべきでしょう。資金的体力のない企業ならば、SNSやダイレクト・リクルーティングを活用した地道な接近戦でスカウトを行うべきです。特に自社に興味がありそうな学生や、他社でのキャリアアップを狙う潜在的な転職者をターゲットとして囲い込んでいきましょう。
売り手市場である採用市場で新たな戦い方を制した企業が、今年の採用活動に成功するでしょう。ぜひ、一緒に頑張りましょう。
著者プロフィール 中野 在人 東証一部上場大手メーカーの現役人事担当者。 新卒で国内最大手CATV事業統括会社(株)ジュピターテレコムに入社後、現場経験を経て人事部にて企業理念の策定と推進に携わる。その後、大手上場中堅メーカーの企業理念推進室にて企業理念推進を経験し、人材開発のプロフェッショナルファームである(株)セルムに入社。日本を代表する大手企業のインナーブランディング支援や人材開発支援を行った。現在は某メーカーの人事担当者として日々人事の仕事に汗をかいている。 立命館大学国際関係学部卒業、中央大学ビジネススクール(MBA)修了。 個人でHRメディア「転キャリ」を運営中 http://careeruptenshoku.com/ |