放射線医学総合研究所内にあるゲルマニウム半導体検出器

 まず、長い期間にわたってモニタリングを継続することが重要となる。「仮に、原発からの放射性物質の放出が止まったとしても、セシウム137の半減期の長さを考えて、長い間、挙動を追っていく必要があります」

 頻度や観測地点を増やすことも、強化すべき点となる。4月6日と12日に福島県が計測した地点は、それぞれ70カ所と54カ所。今後は、現状の観測地点箇所は維持しながらも、特に濃度の高かった地点をさらにきめ細かに調査するなどの方法が重要となるだろう。

 そもそも、セシウム131やセシウム137といった放射性物質は、汚染原因物質の中でも比較的測りやすい。「放射性物質は危険という印象があると思います。しかし、農作物に金属物質がいくら含まれているか分析する方が難しい。粉末状や液体状にせず、そのまま測定器にサンプルを置いてすぐに測れるのが、これら放射性物質の特徴です」(内田氏)。

 また、放射性物質の濃度のモニタリングは、計測技術の発達によって以前よりも高い精度で容易に行えるようになっている。

ゲルマニウム半導体検出器で計測されたヨウ素131(I-131)やセシウム137(Cs-137)、セシウム134(Cs-134)などの放射性物質。放射性医学総合研究所の敷地内で採取した環境試料を測定したもの。

 放射性物質の濃度測定では、かつて「NaIシンチレーション検出器」と呼ばれる装置が主に使われてきた。これは、ヨウ化ナトリウムの結晶が放射線を受けて発する蛍光の強さから放射線量を検出するもの。だが、「分解能が弱く、例えば、検出されたヨウ素131とセシウム137の定量が難しい」(田上氏)。

 放射性物質の種類を判別しづらいという問題を解決したのが、「ゲルマニウム半導体検出器」という装置だ。福島県での土壌モニタリング調査でも使われている装置で、放射線医学総合研究所内にも設置されている(写真)。

 この装置では、採取した土や野菜などのサンプルを容器に入れ、放射線を遮蔽する鉛の重い扉を閉めて計測する。放射線がゲルマニウムの半導体を通過する時、マイナスの電子とプラスの正孔に分かれるので、これを利用して放射性物質が出したエネルギーの量を求め、そこから放射線量を測る。