駅周辺にあるいくつかの既存公共施設を集約して公園の敷地内に建設し、空いた公有地は民間への売却などを検討するという計画が浮上した、神奈川県相模原市の鹿沼公園。多くの市民に計画を知ってもらう一方で、単なる「反対運動」にならないようにできた最大のポイントはなにか。相模原市での活動の中心の一人である同市市議会の五十嵐千代議員に、Public dots & Company代表取締役の伊藤大貴氏がインタビューした。(JBpress)

※本記事はPublicLab(パブラボ)に掲載された「鹿沼公園の官民連携事業に見る、これからのコミュニケーションデザインのあり方」を再構成したものです。

(株式会社Public dots & Company 伊藤大貴)

――市民が要望することで、当初1回の予定だった市民説明会が合計9回開かれました。なかなかの成果です。このほかにワークショップも開催したんですよね。

 市民のチームと専門家チームの2つのチームを作ったことはお話ししましたが(前編「性急な地域計画に反対署名はNG、これが有効策だ」)、ワークショップは専門家チームが担当しました。

 このチームは、建築家やランドスケープの専門家、環境NPOの方、コミュニケーションデザインを研究している大学の先生などがボランティアで参加してくれました。その方々と相談しながら、ワークショップを設計したのです。

 そして、2017年12月にコミュニケーション・デザインの専門家である野村恭彦さん(当時:フューチャーセッションズ代表取締役社長)をお呼びして、鹿沼公園を考えるワークショップを開催しました。

――なるほど。外部の専門家に力を借りながら、コミュニケーションをデザインする。それでもワークショップに参加する市民にはそういう裏の仕組みは見えないでしょうから、声の大きい人の意見だけが目立ってしまうワークショップになってしまう可能性はあったと思うのですが。

「何かを解決しようとしないこと」が大事

 ワークショップを実施するときに、一番気をつけたのは「そのワークショップで何かを解決しようとしないこと」でした。ワークショップを行う際、この点を参加者にはていねいに説明しました。

 鹿沼公園の件は、市民に説明がないことに怒っている人もいれば、交通公園が潰れることに反対の人や、売却された公有地がマンションになることを懸念する人もいました。さらに「そんなに悪くないんじゃない?」という人もいて、賛成と反対の間にグラデーションが存在したのです。さらに、同じ“市民”といっても、公園の近くに住んでいる人もいれば、そうでない人もいましたし。

 あの時点で大事なことは、「関心を持ってもらうこと」、「この問題にコミットしようとする人を増やすこと」、「いろんな考えがあることを理解しあうこと」だと考えました。