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2019年12月19日、年末恒例の年次記者会見におけるプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

(文:名越健郎)

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2019年12月19日、年末恒例の内外記者会見を行い、4時間にわたって質問に答えた。サプライズはなかったが、ロシアの今後の内外政策を占う意味深長な発言が少なくなかった。大統領任期制限を厳格化する憲法改正に言及したり、社会活動やビジネスを行う2人の娘に関する質問に尻込みするシーンもみられた。ここでは、地域別に主要な発言を紹介しながら、2020年のロシアの外交戦略を探った。

中国:中露軍事同盟を否定

 中露関係についてプーチン大統領は、

「われわれは中国と軍事同盟を結ぶ計画はない。東アジアには米国、日本、韓国などの軍事同盟があるが、これは非生産的で不吉なものだ」

 と述べ、中国との軍事同盟を明確に否定した。大統領は10月初め、「中露は戦略的パートナーシップが完全に維持されている点で同盟国だ」と初めて「中露同盟」に言及していたが、軍事同盟の選択肢を排除した。

 実は、2001年に締結された現行の中露善隣友好協力条約は期限が20年で、2021年に期限切れとなり、両国は条約の取り扱いを検討している。条約は、双方が異議を申し立てない場合、5年間自動延長と規定しているが、近年の関係強化を受けて、新条約が結ばれる可能性もある。

 プーチン発言により、「一方が攻撃を受けた場合、他方が支援する」という軍事同盟が結ばれることはなさそうだ。しかし、相互防衛義務を明記しない「準同盟」と規定されることは考えられる。その場合でも、地政学的に日本には重大な脅威となろう。

 さらにプーチン大統領は、

「中露関係で最も重要な成果は、両国の信頼が前例のないほど高まったことだ」

「われわれは多面的な戦略関係をさらに強化していく」

「米露しか持たない早期警戒システム技術の提供を含め、中国との軍事技術協力を発展させる」

 と、引き続き中国一辺倒外交を強調した。

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