ロボアドとの違いは海外ETFへの経験とテーラーメイド

――契約する上で基準としている預かり資産額はありますか。

安東 明確にうたっているわけでありません。長く従事したプライベート・バンキングでは1億円以上の運用を担っていました。そもそもRIAのビジネスは薄利であるため、一定以上の金額でなければ長期的にもサービスの提供が厳しい面があります。また、アドバイザーとしては、運用だけではなく、相続や信託、不動産活用などお客様が解決すべき課題に向き合うのも大切な役割です。

 契約をしているお客様のイメージとしては、会社オーナーなどで、経営する会社において事業リスクを十分に取っています。「家族のための資産保全」を主眼に、オーナー株式を流動化した後の資産を運用するといったニーズです。年率3~5%程度の利回りを期待した分散投資を地道に長く続ける感じでしょうか。海外ETFでポートフォリオを組む際も、事業で特定の国へ直接投資をしているのであれば、そうした国への投資比率を除いたプランをお客様と検討します。

――数百万円の資産規模で海外ETFでのポートフォリオ運用を望む人にとっては、惜しい話です。

安東 海外ETFを投資対象に据えたロボアドバイザーは、近しいサービスだと思います。ただ、プログラムを組んだクオンツ(注:数的なルールに基づいた)運用と想像されますので、私たちのテーラーメイドのポートフォリオづくりと発想は異なります。海外ETFに日本での初期段階から長く携わってきた経験も当社にはあると自負しております。

 私も幅広い層の投資家に向けて何か貢献ができないかと考えてはいます。いまのところ、RIAとは違う領域で「おカネ学」という観点から、iDeCoに関する本を出版したり、大学のエクステンションプログラムで、シニアの資産運用と生活設計について講義をしたりと、これまでに経験で培った金融知識を提供しています。

iDeCo プロの運用教えてあげる!安東さんが執筆した『IDeCo プロの運用教えてあげる!』(秀和システム)

――日本においても、RIAの認知度が高まるといいですね。

安東 顧客本位の業務運営において、RIAは優れた仕組みだと思います。例えば、地方の銀行や信用金庫、信用組合において金融アドバイザーとして活躍できる方の中には、コミッション型のビジネスではなくフィー型のRIAを望む方も多いのではないかと思います。RIAが幅広くネットワークを組むことで、もっと日本の個人向け金融サービスを活性化させていけたら、と考えています。

【取材後記】
元プライベートバンカーで海外ETFのエクスパート。そんな安東さんがRIAを志したのは「自分の親に勧められる金融商品しか、勧めたくない」という思いと、「商品別ノルマなど愚の骨頂」という販売者視点への疑問符があるように感じられました。RIAの認知度が高まることで、日本のIFAのあり方を考える機会も広がるかもしれません。