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  近年、企業の研修のあり方が変わりつつあります。新卒一括採用や年功序列といった日本型人事制度の終焉は、同時にこれまでの人材育成手法の陳腐化を意味します。終身雇用を背景とした5年、10年という長い時間軸での人材育成、特に階層別教育はもはや時代にそぐわないものでしかありません。急速なボーダーレス化、デジタル化、そして日本社会の人口構造変化。そのような中で、人事と研修会社はどう変わるべきなのでしょうか。今回は、これからの研修のあり方と研修会社の選び方をご紹介します。

時代に合わせて人材開発のあり方も変化が求められる

 今年3月に経済産業省が「企業の戦略的人事機能の強化に関する調査」の報告書を発表しました。その中で、世界的なデジタル化による環境変化と日本の少子高齢化をはじめとする社会変化を背景に、今後の経営リーダー人材開発のあり方を以下のように訴えています。

「従来のジェネラルローテーションの中で自然発生的に経営リーダーが生まれてくるのを待つ方法では、現代のトップマネジメントに必要なスキル・経験が不足してしまう(中略)この問題を解決するためには、早期に経営リーダー候補を選び、(中略)時としてタフアサインメントを与えて、継続的に鍛えることで、速やかにリーダー人材を開発する必要がある」(報告書 P.50より、文末に資料のリンクあり)

 これは近年の変化に対し、日本企業の対応が追いついていないことに対し政府がアラートを出しているといえるかもしれません。

 先進的な企業の中には、世の中の変化をとらえ、すでに手を打っている場合もあります。しかし急激な変化の中で、多くの企業の人事担当者は、変化に対し打ち手が全く追いついていません。世の中の変化がわかっていってもついつい、楽な階層別研修を選びがちになります。

 対応が追いついていないのは研修会社も一緒です。これまでの階層別教育は毎年需要があり、参加人数も多いため、研修会社にとっての大きな収益源でした。人事としても、研修会社に一括して任せられるのは効率的で助かっていました。

 現在、研修会社の多くが提供している日本のマネジメント教育は、日本で90年代後半に生まれたMBAブームが発端と言えます。私も国内ビジネススクールでMBAを学びましたが、変化の激しい現代では、MBA知識よりも変化に対応できるセンスが求められます。なぜなら、MBAは「過去」だからです。MBA自体が古いのではありません。MBAで扱われている理論は、過去の成功企業を研究して作られているのです。

 日本企業がこの20年間でMBAや成果主義などアメリカの知識をどんどん取り入れていった一方で、反対にアメリカ企業はリーン開発やアジャイルなど、日本企業の研究をもとにしたマネジメント手法を取り入れました。一概にこれだけが原因とは言えませんが、その結果アップルやGoogleをはじめとするアメリカ企業は成功し、日本企業は失われた20年を過ごしました。ある意味、日本にMBAブームを起こした研修会社がもたらした功罪と言えるかもしれません。