米マサチューセッツ州ボストンにあるMIT

 しばらく前にこのコラムでもお伝えしましたが(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57592)、マサチューセッツ工科大学(MIT)の「メディアラボ」が苦境に立っています。

 どうやら再建は困難、あるいは不可能なのではないか・・・本稿を執筆しているドイツのミュンヘンでは、そのような噂を耳にしました。

 何があったのか、一応振り返るところから始めたいと思います。

エプスタイン疑惑と伊藤穣一所長の辞任

 問題は2つか3つのレイヤーからできています。

 まずMITメディアラボそのものの問題としては、2008年のリーマンショック以降、経営上の問題をいろいろと抱えることとなりました。

 2011年に無学位の日本人、伊藤穣一氏を所長に据えたのも、やり手の経営者として財務の火消しを期待しての人事だったことが今や明らかになりました。

 当初は慎重だったらしい伊藤穣一氏ですが、資金繰りは資金繰り、お金に名前は書いてありません。

 犯罪の上がりである可能性が高く、決して受け取ってはいけないとMITが内規に定めていたジェフリー・エプスタインの蓄財から、向こう20年間で80万ドルの運転資金を、それと分からないように偽装工作をしながら受け入れていたことが発覚。

 伊藤氏の個人投資口座にもエプスタインから120万ドルが振り込まれ、さらにビル・ゲイツ財団を中継したマネーロンダリングで750万ドルに及ぶ巨額の金の流れが隠されていたことなどが明らかになったものです。

 どうしてエプスタインのお金をもらってはいけないのでしょう?

 この事件が明らかになった後でも、メディアラボの創設者、ニコラス・ネグロポンテは次のような発言をしています。

「どんな金でも、大学への献金は正しい使途なのだから、どんどん受け取ったらいい」

 そして、極めて非倫理的だと轟轟の非難を浴びてもいる。なぜなのでしょう?