(尾藤 克之:コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)
東京・中野区でいま、「中野サンプラザ解体」を含む中野駅前の再開発が進められています。旗振り役は「サンプラザ解体見直し」を訴え得て区長選に勝利したはずの酒井直人区長。いまでは「中野サンプラザのDNAを継承し、デザインや名前についても引き継いでいく」などという方針を示すという豹変ぶりを見せています。酒井区長によれば、中野サンプラザを解体して最大収容人数7000名の多目的ホールなどの施設をつくるというのです。
中野区民である筆者は、この政策転換の経緯に強い違和感を抱いています。区民に対してまともな説明もなく、「サンプラザ解体」反対論者だと有権者が信じていた区長が、「解体」の最前線に立っている。まだそのことに十分気づいていない区民も多くいるのです。そうした状況の中で、事業が急がれているのです。
そこで前回につき続き、サンプラザ解体と中野駅前再開発問題を取り上げたいと思います。
「事業協力者」が「事業者」に選ばれる流れ
改めて調べてみると、区役所・サンプラザ地区再整備の事業計画策定に向け、公募・選定された「事業協力者」について疑問が残ることがわかりました。「事業協力者」とは、事業などを実施するときに、適切な助言や提言をしてくれる人々のことです。中野区に対しては、当初、3つの事業者グループがプレゼンをおこないましたが、事業者グループ決定後も、提案内容の詳細や判断基準などは公開されませんでした。区民の情報公開請求によってようやく開示されたものの、選定された理由は極めて抽象的なものでした。