中野サンプラザ

(尾藤 克之:コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)

 10月、建て替えが検討されてきた「中野サンプラザ」を含む中野駅前の再開発について、新たな方針が発表されました。中野区の酒井直人区長は「中野サンプラザのDNAを継承し、デザインや名前についても引き継いでいく」方針を示しています。さらに、中野サンプラザを解体して最大収容人数7000名の多目的ホールなどの施設をつくるとしています。

 筆者はこの発表に強い違和感を覚えています。そこで前回に引き続き、中野区議会議員いながきじゅん子(稲垣淳子/現4期目、無所属)さんへのインタビューなどをベースに本稿を下記進めてみようと思います。

既成事実化されたサンプラザ解体

 酒井氏は区長就任後、中野サンプラザ解体と1万人アリーナ建設について、「いったん立ち止まる」と前区政の方針を凍結しました。ところがその後、中野サンプラザ解体を公表してしまいます。区民としてこれは、選挙時の公約撤回ではないかと受け止めています。

 この問題を、当時のマスコミ報道で初めて知ったという方も多く、「区長は中野サンプラザを残してくれるのではなかったのか? 本当になくなってしまうのか」と解体を惜しむ声が多かったと、いながき区議は説明します。これは、区内外を問わず多くの方々の中野サンプラザへの愛着の強さを物語っています。

 筆者は、中野サンプラザ解体方針を掲げていた前区政のプランをほぼそのまま引き継ぐ形で、都市計画決定されてしまったことに違和感を覚えています。しかしこれにより、中野サンプラザ解体が既成事実化されていることも問題だと考えます。

 記者会見や区報で伝えられていたのは、中野サンプラザ「再整備」の方針のみでした。なのに、その裏で、区民への丁寧な説明や合意形成もなされないまま、中野サンプラザ「解体」の準備が粛々と進められてきたからです。