日本の労働者は現役時代に十分な賃金をもらえず、年金で老後の生活をカバーできる仕組みにもなっていないため、事実上、一生涯の労働を余儀なくされている。政府は企業に対して70歳までの雇用延長を求めているが、これも現状を追認した結果に過ぎないと解釈した方がよいだろう。

日本の年金が抱えた3つの問題

 整理すると、日本の年金制度には以下の大きな課題があると認識できる。

 1つ目は、年金の基礎的な位置付けである。

 公的年金について、個人単位で老後の生活を支える制度であるとみなすのであれば、現在の保険料水準では到底、財源が足りない。現状の水準を維持するということならば、制度本来の趣旨を徹底し、老後については家族が面倒をみるか、自助でカバーするとの割り切りが必要となる(筆者はそうは思わないが)。逆に個人単位で老後の生活を支える制度と見なすなら、保険料徴収をさらに強化する必要があるだろう。

 2つ目は、人口減少と高齢化に対する認識である。

 年金が賦課方式である以上、高齢化と少子化が進めば、給付水準は減らさざるを得ない。人口減少は数十前から予想できていたことであり、もしその影響を軽視していた、あるいは意図的に無視していたのであれば、国民が主権者である以上、国民全員の責任である(誰を政治家にするのか決めるのはほかでもない私たち自身である)。

 人口減少はすぐに効果が得られるものではなく、これを解決するには大規模に移民を受け入れるしか方法はないが、日本人は基本的に移民に否定的であり、この方策は実施できない。

 3つ目は経済の基礎体力である。ドイツのように年金制度がそれほど手厚いものではなくもて、経済が豊かで賃金が高く、国民が十分に資産形成をできる状況であれば何の問題もない。基本的に老後の生活水準はその国の経済力に比例すると考えた方がよい

 日本人は過去20年、変化を激しく嫌い、その間に、経済力という点で他の先進国に致命的な差を付けられてしまった。日本のGDP(国内総生産)は過去20年、ほぼ横ばいだったが、諸外国は1.5倍から2倍に規模を拡大させている。今後、日本が諸外国と同じ成長率を実現したとしても、実質的に諸外国の半分になった経済格差は埋まらない。

 諸外国と同レベルの年金(あるいは老後の生活)を実現するのであれば、諸外国の2倍の成長を実現する必要があるが、これは極めて難易度が高く、しかも私たち国民には相当の覚悟が求められる。現実的には給付水準の低下と保険料の引き上げという現実を受け入れるしか方法はなさそうだ