ドナルド・トランプ大統領は2期目を目指すというから大統領職に未練はあるのだろうが、ビジネスマンであったから判断の基準はディールにおける損得であり、PC(ポリティカル・コレクトネス、政治的正義)を否定し、過去の経緯を顧みない言動も多々見られる。
そうした典型がほとんど下準備なしの米朝首脳会談であり、調整なしの日米安保の不平等性発言などである。
対北朝鮮では大統領再選に向けた宣伝と同時に、大統領としてのレガシー作りもあるであろうが、当初の北朝鮮の弾道ミサイルや核兵器不容認から後退しており、日本の安全にとっては大きな問題である。
また、バラク・オバマ前大統領や国務長官などは「尖閣には5条が適用される」と発言してきた。しかし、トランプ氏の日米安保不平等発言は、「尖閣ごときに米国は自国の命運を賭けない」という意志表示にも思える。
拉致問題の解決でも、米国が動いてくれ日本はそれに連動すればいいといった考えがあるかもしれないが、日本が先ず動かなければ米国が動くはずはない。
ただ、自由主義陣営として現在の中国の動きを脅威と見做す点は共有している。香港の1国2制度問題、そして台湾の自由主義が貫けるか否かの重要な時で、日本の支持表明を期待している。
いずれにしても軍事的経済的に強大化して自由や民主主義並びに法の支配といったこれまで何世紀もかけて確立されてきた価値観を否定する中国のあり様が問題の核心である。
日本はこの中国をはじめ、問題を抱えた国々と隣接しており、地政学的に大きな影響を受ける。
自由主義陣営の強力な一員として、同盟国米国と歩調をそろえて対中政策を進めていかなければならない。そうした中で安倍晋三首相の中国傾斜は異常であり、対北朝鮮や対韓国、そして台湾問題などをしっかり議論しなければならない。
ところが、そうした議論は一切行わないで、季節外れの花見論争ばかりである。
日本の政治が井の中の蛙で、矮小化してしまっている。世界情勢が急転換し出してからでは後れを取ること必定ではないか。