2019年10月26日、渋谷のハロウィンのなかで在日香港人学生たちがフラッシュモブ的におこなった香港デモ応援イベントに登場した「時代革命」旗。日本国内の支援運動は非常に平和的だ(筆者撮影、以下同)

 5カ月以上続く香港の騒乱。当初、平和的に始まった市民によるデモは、いつしか、街の破壊を伴う警察との暴力的な衝突にシフト。いっぽう、11月24日の区議会選で市民は体制側にノーを突きつけた。近著『もっとさいはての中国』(小学館新書)が話題のルポライター安田峰俊氏が、デモと政治の嵐に揺れる香港からレポートする。

選挙後もデモの継続はほぼ確実

 2019年6月から始まった香港デモは、デモ隊や市民の犠牲者が次々と報じられるなど混迷を深めている。11月14日、中央政府の習近平が強硬な非難声明を発表したこともあり、香港警察側の鎮圧はいっそう激化。対してデモ側も、都市インフラや「親中派」(とみなされた)商店への破壊行為をエスカレートさせた。やがてデモ隊は名門大学である香港中文大学や香港理工大学に立てこもり、理工大では激烈な抵抗の後、20日までに1200人近くが逮捕された。

 いっぽう、その後に香港では区議会選が11月24日に予定通り実施され、前後の数日間はデモが沈静化した。当該の選挙は71.2%という未曾有の高投票率を記録したうえ、従来は過半数に達したことがなかった民主派勢力が85%もの議席を取る地滑り的な大勝をおさめている。デモを支持する民意が強烈な形で示された形だ。

11月24日、九龍半島の紅磡地区にて、区議会選の投票に並ぶ香港市民。朝から晩まで、各投票所で100~数百メートルに及ぶ長蛇の列が見られた

 歴史的な成果を出した区議会選後も、過激な行動を含むデモの継続は確実な情勢である。警察側は10月から強力な中国製の催涙弾を使用し、住宅街やオフィス街でも構わず乱射している。ガスに含まれるダイオキシンなど有害成分への健康懸念は現地の日本人駐在員や観光客の間にも広まり、私たち日本人にとっても他人事ではない。今回の原稿ではあくまでもデモについて書いていこう。