近年のHR業界では、AI、IoT、RPAなどによる業務効率化ソリューションに注目が集まっている。働き方改革に伴う「生産性向上」というテーマは、テクノロジーの進化によって加速している印象だ。しかし、言葉だけが独り歩きしているイメージもぬぐえない。
そこでHR総研では、「HRテクノロジー」の導入状況に関する実態調査を行なった。調査の結果、HRテクノロジーを「導入している」と回答した企業は、わずか11%だった。しかし、「検討中」と回答した企業は43%もあり、注目度は極めて高いことが分かる。
今回の調査では、「導入している」「検討中」「導入の予定はない」という回答別で分類し、それぞれが抱える課題感やコメントについてレポートしたい。
HRテクノロジー導入済みの企業は、わずか11%
HRテクノロジーとは、採用、配置、育成、評価、労務など、人事領域におけるクラウドソーシング、ビッグデータ解析、AI(人工知能)、IoTといった新しいテクノロジーのことを指す。
上記の定義で「HRテクノロジーを導入しているか」と質問したところ、「導入している」と回答した企業はわずか11%であり、「検討中」(43%)とする企業もあるものの、実に9割近くの企業がHRテクノロジーをまだ導入していないことが分かった。
従業員規模別で見ると、1001名以上の大企業でも導入済みは13%しかない。しかし、大企業では「検討中」が56%を占めており、導入に前向きなことが窺える。
従業員規模が1000名以下の中堅・中小企業では、「検討中」が30%前後にとどまっており、まだまだこれから、という印象だ。
【図表1】HRテクノロジーの導入状況
中堅企業の導入領域では、「採用管理」と「コミュニケーション促進」が目立つ
ここからは、「導入している」と回答した企業に絞ってレポートする。
HRテクノロジーを導入している領域について質問したところ、「評価/人事考課」「人材配置(キャリア管理)」「労務管理」が、いずれも34%で同率1位となった。以下、「採用管理」(31%)、「ヘルスチェック(メンタル)」(19%)、「採用ブランディング」(16%)と続く。
企業規模別で見ると、従業員数301~1000名の中堅企業で「採用管理」(67%)と「コミュニケーション促進」(33%)の導入が突出している。
近年、採用の母集団形成、メール配信、採用イベントのスケジューリング、採用ホームページのコンテンツ管理、書類選考から面接までの進捗やタスク処理、選考の結果処理など、一括で管理するクラウドソリューションも台頭してきている。また、チャットなどのコミュニケーション促進ツールもクラウド全盛で、労務管理もクラウドソリューションが増えてきている。
カスタマイズを要する大規模なシステムの導入は難しくても、クラウドベースのソリューションであれば、予算的にも比較的導入しやすい。
従業員数300名以下の中小企業で「労務管理」(45%)の導入が突出していることから見ても、こうしたクラウドソリューションの導入が進んでいるのではないか、という予想が出来る。
【図表2】HRテクノロジーを導入している領域