取り組み施策では「女性の採用数拡大」「ダイバーシティ教育」「女性管理職比率の数値目標設定」が躍進 

 本項と次項については、301名以上の企業に限定してレポートする。女性活躍推進を「実施している」と回答した企業に具体的な施策を質問したところ、「時短勤務やフレックス勤務などの柔軟な働き方に向けた制度の実施」(60%)がトップを占めた。2位は、「産休・育休からの復帰支援」(57%)である。

 注目すべきは、「女性の採用数拡大」(49%)、「ダイバーシティ教育の実施(男性管理職の意識改革、セクハラ・マタハラ防止など)」(43%)、「女性管理職比率の数値目標設定」(42%)の躍進である。いずれも昨年調査では、20%を下回る数値だった。

 これまでは「女性が働きやすい環境を整える施策」が上位に来る傾向だったが、採用数の拡大や意識改革、数値目標の設定を重視する傾向が顕著になったということは、日本企業が女性活躍推進に本腰を入れ始めた、という現れと言えるだろう。

【図表6】女性活躍推進・女性登用で実施している施策(従業員数301名以上の企業)
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「柔軟な働き方に向けた制度の実施」や「産休・育休からの復帰支援」は、実施率も高く、効果の実感も高い 

 続いて、効果の実感について質問したところ、実施している施策同様、「時短勤務やフレックス勤務などの柔軟な働き方に向けた制度の実施」(34%)、「産休・育休からの復帰支援」(30%)が上位を占めた。
一方、「女性の採用数拡大」(17%)、「ダイバーシティ教育の実施(男性管理職の意識改革、セクハラ・マタハラ防止など)」(19%)、「女性管理職比率の数値目標設定」(11%)はいずれも20%を下回っている。「特に効果を実感していない」(18%)という回答も20%近く存在することを考えると、実施施策が効果を発揮し始めるまでは、しばらく時間が必要な印象だ。

【図表7】女性活躍推進・女性登用で効果を実感した施策(従業員数301名以上の企業)
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メーカーと非メーカーで課題感が大きく分かれる結果に 

 ここからは再び、全体の数値を基にレポートする。女性活躍推進・女性登用を進める上での課題について質問したところ、トップは「女性の意識・就労感」(34%)がトップとなった。以下、「女性ロールモデルの欠如」(31%)、「風土・社風」(29%)と続く。「男性上司の意識」(21%)は、「女性の意識。就労感」よりも13ポイント低い。

 業種別で比較すると、メーカーでは「女性の意識・就労感」「風土・社風」「女性の採用数」の3項目が、他に突出している。非メーカーでは「女性の定着率」「育児・家事支援の有無」「長時間労働が前提のワークスタイル」が目立つ。特に「長時間労働が前提のワークスタイル」は、メーカー4%に対して、非メーカーでは19%に及ぶなど、差が激しい。

 この結果から、全体的に女性自身の意識改革が大きな壁となっており、特にメーカーにおける女性の就労感や風土・社風が、女性の就業率を下げていることが窺える。しかし、一度就業してしまうと、女性の定着率はむしろメーカーのほうが高い。

 非メーカーでは女性の採用数は多いものの、長時間労働や育児・家事支援の有無など、女性が働きやすい環境の整備がネックとなり、結果として女性の定着率が低くなっている実状が浮き彫りとなった。

【図表8】女性活躍推進・女性登用を進める上での課題(業種別)
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 女性活躍推進の実状について意見を求めたところ、たくさんのフリーコメントが寄せられた。女性活躍推進に一定の理解を示しつつも、日本社会全体における「女性の就労感」に課題を感じる意見も見られた。以下、いくつかを抜粋して紹介する。

・会社全体、社会全体の男女均等といった意識を高めていかないと、制度だけ作っても難しい。人事はなるべく女性管理職を増やす努力も推進すべきだし、社員もそれをウェルカムと思わないと、進まない(1001名以上/サービス)
・男女を問わず、能力によって重要な役職には登用すべきと考える、ただ、長年の社内風土の結果として、女性社員の上昇志向が弱い(1001名以上/メーカー)
・性別に関係なく、能力重視の観点で言えば、男女関係なく、管理職に登用すれば良いが、家庭環境として女性の場合そうはならないケースが実態として多々ある。それらを勘案した場合、なかなか一般社員からの理解も得られにくい状況である(301~1000名/メーカー)
・女性自身も含めて、育児は母親がやるもの、という固定観念が変わらない限り解決は難しいのではないか。父親や両親たちが協力して、皆で子供を育てるという意識がなければやはり女性は何となく罪悪感を持ちながら仕事と家庭の板挟みになるように思う。企業でできることは限られている(301~1000名/情報・通信)
・確かに社会的にまだ、女性が活躍しにくいという面があることも事実だが、反面、女性側も男性ほど仕事を重視しない考え方を持っている方も多いのも事実。そのため、女性側の意識改革も併せて行っていくことが必要だと思う。少なくとも私の周りでは、会社に軸足を置かない考え方の人が多く、会社としての組織よりプライベート重視の比重が圧倒的に高く、逆に登用を望まない人が多い状況です(300名以下/情報・通信)
・現実問題として、男女の区別なく登用を考えたとしても、能力・意欲の水準で、管理職候補となる女性の絶対数が少ない(300名以下/金融)