1215mのトンネル、頭上にはコウモリの巣
次の2号トンネルの長さは1215mと、新線下り線では最も長い。ライトがなければまっ暗闇で、可能だとしても一人で歩く気にはなれない。集団で行動するからこそ安心して楽しめることもあると実感する。
先を歩く人たちのざわつく声が聞こえた。トンネルの天井にライトを向けると、真っ黒い巣が張り付いており、5~6匹のコウモリが慌てて巣から飛び出してきた。侵入者なのはこちら。驚かせてしまって申し訳ない。
長い2号トンネルを抜けると、すぐに鉄橋がある。写真を見るとトンネルの出口付近からレールが2重になっているのがおわかりいただけるだろう。鉄橋やカーブなどでは列車が脱線し大幅に逸れると、大きな事故につながる可能性が高い。小幅な脱線にとどめるために補助レールが敷かれている。鉄道に詳しい人ならよく知っていることだろうが、私のようにそうでない人にとっては線路を歩いて初めて知ることも多い。
左右両側に鉄橋が見られる絶景スポット
碓氷川をまたぐ鉄橋の上で小休憩する。設備のさびつきはあるものの、まだ十分な現役感を持つ鉄橋の上は、ほどよい緊張感があり非日常の気分を高めてくれる。
実はこの場所、旧線、新線下り線、新線上り線の3つの橋を互いに眺めることができるとっておきの場所なのだ。
進行方向(軽井沢側)に向かって左手には、旧線の碓氷第三橋梁、通称「めがね橋」が見える。めがね橋は遊歩道となっているアプトの道にあるので、普段から訪れる観光客がある。めがね橋の上にいる人からも、鉄橋の上にいる私たちが見えただろう。「あの鉄橋へはどうやっていくのかな?」と思った人がいたかもしれない。
一方、右手には新線上り線の鉄橋が見える。写真ではわかりにくいが、橋は結構な傾斜がある。最大66.7‰(パーミル、線路の勾配を表す単位でパーセントの数値を10倍したもの)という国内有数の勾配をもつこの区間、1000m進めば66.7mの高低差が付くということだ。例えば10両編成の全長200mの列車がこの勾配を進んだ場合、列車先頭と最後尾の高低差が13mにもなると考えれば、この勾配の険しさが実感できるだろう。
そして、こんな山の中にこれだけの構造物を作った明治と昭和の人々のことを少しのあいだ考えてみた。