廃線に立ち入れるのはイベント時だけ

 横川から碓氷峠の中間地点である熊ノ平(熊ノ平駅跡)までの旧線は、「アプトの道」という名前の歩道として整備され、いつでも歩くことができる。一方2本の新線はレールが撤去されずに残っている(ほとんどの架線や信号機などは撤去)が、立ち入りは禁止。この普段立ち入れない新線部分を歩けるイベントが「廃線ウォーク」だ。安中市観光機構という一般社団法人が運営している(他の旅行会社などがツアーを実施することもある)。

 今回参加したのは、横川から新線下り線を通り軽井沢駅手前まで、廃線になった全区間を約7時間(昼食などの休憩も含む)かけて踏破するというものだ。

 位置関係を次の図で整理しておこう。横川駅から温浴施設の「峠の湯」までの区間は旧線も新線も同じ。現在は新線下り線レールを使った観光用のトロッコ列車が運行されていて、今回の廃線ウォークでもこれを利用した(並行する新線上り線を使ったアプトの道を歩くこともできる)。

 峠の湯から先の新線が立入禁止区間だ。図中の数字は今回歩いた下り線のトンネルの番号を示している。

※配信先でお読みの場合、写真と図はこちらでご覧いただけます。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57913

横川駅から峠の湯はアプトの道またはトロッコ列車。峠の湯からは新線下り線を歩き、18号トンネル出口付近がゴール。そこから軽井沢駅までは徒歩10分強
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 ちなみに、「下り線」という言葉にだまされてはいけない。軽井沢駅の手前まではひたすら上り坂。かつての列車がそうであったように、一歩一歩上り勾配を足に感じて歩いていくのである。

廃線ウォークへいざ出発

 では、いよいよ出発だ。この日の参加者は51人。そのうち女性は10人と全体のほぼ2割。女性に参加の理由を聞いてみたところ、「友達といろいろなイベントに参加していて今回もその一つ」「始点から終点までを踏破するのが趣味」「鉄道好きの夫に誘われて」など、多様な答えが返ってきた。

 主催する安中市観光機構の担当者から説明を受けた後、峠の湯から先の立入禁止区間に入っていく。新線下り線は18本ものトンネルを通るため、ライトの携行とヘルメット着用が必須だ。まずは3本のトンネルを通り抜け、かつて駅のあった熊ノ平を目指す。

安中市観光機構の廃線ウォーク企画を担当する上原将太氏。興味がそれぞれ違う参加者に楽しんでもらうために、さまざまな工夫を継続して取り入れているという
熊ノ平まではトイレも自販機もなし。峠の湯で準備を整えスタートだ

 横川駅からゴール地点(最後の18号トンネル出口)までの高低差は約554m。運動不足の身にとっては、歩く距離よりも、この勾配が懸念材料の一つだった。が、意外にも上り坂という印象はそれほどない。それよりも、線路のバラスト(レールの下に敷く小石)と枕木の上を、どのように安定して歩くかにかなり気を取られる。

トンネルには横川側から順に番号が付けられている(入口左上に表示)。1号トンネルは75mと短いので出口が見える