しかしながら、新浦級潜水艦が海自の警戒網に捕捉されずに日本海を日本列島よりに接近してSLBMを発射した場合には、自衛隊の各種弾道ミサイル防衛システムが効力を発揮するチャンスを期待することはできない

 したがって日本国防当局は、監視衛星や潜水艦や各種対潜哨戒航空機、それに人的情報網などを総動員して新浦級潜水艦の動向を常に把握し、出動した新浦級潜水艦には海自潜水艦をピッタリと貼り付けるような態勢を確立しなければならない。

日本独自の海軍力強化が必要

 このような警戒監視態勢の構築と維持には、同盟国アメリカの関与は期待できない。

 なぜならば、たとえ北朝鮮が北極星3号と新浦級潜水艦を完成させてSLBM潜水艦戦隊の運用を開始したとしても、即座にアメリカの脅威となるわけではないからだ。

 北朝鮮の潜水艦が対馬海峡や津軽海峡、それに南西諸島島嶼線などを突破して太平洋に進出し、ハワイまで2000キロメートル、あるいは米西海岸まで2000キロメートルの海域からSLBMを発射する能力を身につけ、アメリカに対する相互確証破壊能力を手にするには極めて長い年月を要する。その時期が近づくまで、アメリカが動くことはない。

 したがって日本は、北朝鮮が北極星3号を搭載した新浦級潜水艦戦隊を手にするまでの間に、潜水艦戦力ならびに対潜戦力を中心として海上自衛隊戦力をできる限り増強しなければ、中国軍事力に対してだけではなく北朝鮮軍事力に対しても“手も足も出ない”状況に陥ってしまうであろう。