現在のアントウェルペンの街並み

 スペインの国王であったフェリペ2世(在位:1556~1598)は、スペイン王国の黄金期と衰退期を体現した人物として知られます。スペインの繁栄は彼の治世で頂点に達し、そこから急に衰退した、とされています。しかし、本当にそのような考え方は正しいのでしょうか。

 フェリペ2世はその生涯を通じ、大半をスペインで過ごしました。ただ同時に彼は、スペイン以外にも多くの領土をもち、神聖ローマ皇帝であった父・カール5世と同じように、帝国を維持する政策をとらなければなりませんでした。それが、フェリペ2世の評価を下げることになったのです。

 ですがフェリペ2世は、じつはヨーロッパの経済成長に大きく貢献したのです。ここでは、そのことについて述べたいと思います。

フェリペ2世の帝国が抱えた問題点

 1555年、フェリペ2世の父・神聖ローマ帝国皇帝カール5世は退位し、スペインとネーデルラントを息子フェリペ2世に、オーストリア・神聖ローマ帝国関係を弟のフェルディナント1世に受け継がせました。カール5世の治世は、ヨーロッパで急激に宗教改革が広まった時期に当たります。彼はその対応に相当なエネルギーを費やさねばなりませんでした。そして退位から3年後の1558年、カール5世は亡くなります。