一方、反対理由としては、「凶悪犯であっても、国家が人の命を奪うことは道義的にあってはいけない」「国際的な潮流は死刑廃止であり、日米は国連の死刑廃止条約を批准すべき」「誤判の可能性がある場合、死刑を執行してしまうと取り返しがつかない」「死刑は凶悪犯罪の抑止につながらない」といったものがある。
賛否両論の最後に犯罪抑止についての理由を挙げた。
死刑が犯罪抑止に「つながる」「つながらない」とする意見だが、2009年にコロラド大学が行った研究では、死刑は凶悪犯罪を抑止することにならないとの結果が出ており、犯罪学の分野でもすでに認知され始めている。
筆者としては、死刑を復活させて加害者を殺しても何も生み出さないばかりか、さらなる悲しみを生み出すだけであると考える。
加害者を殺すことで、被害者や遺族の気持ちが本当に整理できるのか。遺族の中にはそれで救われたという方がいるかもしれないが、国家があらたに人の命を奪う権利があるのかと問いたい。
凶悪犯罪を犯した者は命で償ってくださいとの思考は道徳上、宗教上、説得力をもちにくくなっている。
7月26日付の米「ネーション」誌で、次のようなことが述べられていた。
「世界にはすでに多すぎるくらいの暴力が蔓延している。政府が(死刑を行って)暴力で加担していてはいけない。米国はこれまで人権擁護のチャンピョンだったはずだ」
トランプが死刑を復活させたことは、これまで民主党リベラル派が推し進めてきた社会政策の揺れ戻しの一端に過ぎない。