少子高齢化により、日本の生産年齢人口は2050年までには第2次世界大戦終戦時の水準に近い5200万人まで落ち込むと予測されている。放っておけば、経済成長率が鈍化し、国力の衰退につながりかねない。

 一方で、次代の日本を担うべき子供たちの学力低下を懸念する声も多い。その背景は何なのか、そして教育現場は今どう変わりつつあるのかを、鈴木寛文部科学副大臣に聞いた。

 「ゆとり教育」だけが学力低下の原因ではない

鈴木寛・文部科学副大臣/前田せいめい撮影鈴木 寛(すずき・かん)氏
兵庫県出身、1986年東京大学法学部卒業。通産省、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)環境情報学部助教授を経て、2001年参議院議員選挙初当選、2009年9月より文部科学副大臣。(撮影:前田せいめい)

鈴木 「ゆとり教育」で学習指導要領が薄くなり、授業時間が減った。そのせいで学力が低下したように言われます。もちろん影響がゼロとは言いませんが、すべてを「ゆとり教育」のせいにするのは間違いです。

 実際、子供たちの学力はそれがまだ続いている間に、2000年の水準に戻っています。PISA(生徒の学習到達度調査)の成績を見ると、習熟度レベル5や4の児童が増え、レベル1、2が減ったことが見て取れます。

 習熟度レベルの高い層が増えたのは、経済的に豊かな家庭が民間教育、つまり塾などへの投資を増やしたから。一方、読解力でレベル1や2が減っていますが、これは文部科学省が読書を奨励したからです。2004~2005年ごろから、朝の15分間読書を小学校の全学年で徹底した。

 戦後、国がやったこの分野の施策としては数少ない成功例だと思いますが、おかげで今では、大人は本を読まないけれど小学生は読む、という状況になっています。いきおい読解力がつき、学力が底上げされたわけです。

 民間教育の新しい取り組みも見過ごせないところです。公文のほかにも、しまじろうの「こどもちゃれんじ」(ベネッセ)、ドラえもんを使った「ドラゼミ」(小学館)など、子供の気をそらさないように工夫したサービスがこの10年くらいで充実してきました。親が危機感を持ったせいで、それらへの注目度が高まったことも大きいでしょう。

規則正しい生活習慣が学力を下支えする

 学力低下の一因は、この20年ほどを総括すると見えてきます。一言でいうと、家庭の教育力が下がったためです。

 統計を見ると、2009年の親が離婚した未成年の子供の比率は1000人あたり11人。1970年の4倍です。母子家庭・父子家庭は2005年で84万世帯で、増加傾向にあります。

 こうしたトレンドの中、長らく学力で圧勝し続けているのは秋田と福井です。両県の共通点は何かというと、3世代同居が多いこと。全体の13~15%を占めます。山形や富山などの3世代同居世帯の割合が多い県も、いい成績です。