麻生太郎首相の郵政民営化「見直し」発言は看過できない。「あ然」とするだけでは足りない。政治家として非常識極まりなく、言語道断だと指摘するほかない。まともな政党ならば衆院選前の「麻生降ろし」が不思議ではないのに、そんな元気も人材もないのが今の自民党。国民はいつまで我慢を強いられるのだろうか。(敬称略)

麻生政権の不支持率7割、4人に3人が定額給付金に反対

失言、失言・・・どうにも止まらない〔AFPBB News

 2月5日の衆院予算委員会。麻生は郵政民営化をめぐり4分社体制の見直しに言及した上で「郵政民営化に賛成でなかったし、担当大臣でなかった」と答弁した挙げ句、「濡れ衣を着せられるとおれもはなはだ面白くない」と言い放った。

 事実関係を確認しよう。衆院ホームページで検索すれば、衆院予算委の審議は動画で視聴できる。

 民主党の筒井信隆から「郵政分割・民営化を見直す考えはあるか」と問われた麻生はまず、要旨次のように答弁した。「今4つに分断した形が本当に効率としていいのか。もう1回見直すべき時に来ているのではないか」

 筒井は「分社化をすぐに見直さなければいけない状況になった。その責任を反省しなければいけない」とたたみ掛け、民営化当時の総務相だった麻生の責任をただした。

 これに対し、麻生は「ごもっともな意見だが、小泉総理の下でわたしの場合は(郵政民営化に)賛成ではなかった。解散の詔書にもサインしないと言って、えらい騒ぎになった。しかし、わたしは内閣の一員だから、最終的には賛成した。みんな勘違いしているが、1つだけ言わせてください。わたしは郵政民営化の担当大臣ではなかった。これだけは忘れないでください。総務大臣だったが、郵政民営化には反対と分かっていたから、わたしだけ外されていた。担当は竹中(平蔵)さんだった。これだけはぜひ記憶してください。濡れ衣をかぶせられるとはなはだ面白くないから」。

 何とも驚くべき発言ではないか。要は、「今の郵政民営化を進めた責任は俺にはない。そもそも民営化に反対だった」と麻生は国会の場で答弁したのだ。何を今さら言っているのか、無責任極まりない。郵政選挙で勝利した与党議員はがく然とし、呆然となった。一方、野党は内心、「麻生がまた墓穴を掘った」と快哉を叫んだに違いない。