ウニ。食材のイメージからは想像できないような外見を持つ。私たちヒトとは似ても似つかぬ姿をしているが・・・。

 私たちが日ごろ食べているもののほとんどは生物である。そして、多くの食材の直系の祖先は私たち人類より先に地球上に現れている。なぜヒトは「その食材」を食べることになったのか。その疑問を解くカギは、この地球上でヒトと生物がたどった進化にある。ふだん何気なく食べているさまざまな食材を、これまでにない「進化の視点」で追っていく。それぞれの食材に隠された生物進化のドラマとは・・・。

 第1話:シアノバクテリア篇「イシクラゲは27億年の生物史が詰まった味だった」

 寿司屋などでウニの軍艦が出てきたとき、「ウニを最初に食べてみようと思った人は勇気があるよねえ」という類の話題になることがある。おそらく今宵もどこかで発生していることだろう。実際、ウニの実物を見たことのない人が海岸でそのイガグリのような物体を見つけても、それが動物で、しかも食べられる生きものだとは想像すらできないであろう。

 世間一般では「動物」というと哺乳類を指すことが多く、小学生用の「動物図鑑」でも載っているのは哺乳類である。さらには町の動物病院の多くも診察の対象は哺乳類であろう。しかし、生物学では「運動性を持ち、無機物から有機物を生産できない多細胞生物」はすべて動物に分類される。よって、脊椎動物はもちろんのこと、昆虫やイカなども動物だ。

 と言われても、ウニは「動いている」感じがしない。そもそも動物かどうかということ以前に、形態が特異すぎる。ウニという生物がこの地球に存在していなかったら、あのような奇妙奇天烈な形の生物をゼロから創造できるデザイナーがいるであろうか。

 私たちヒトが属する脊椎動物そして昆虫やエビ・カニ、さらにはイカやミミズなどの動物の体制(ボディプラン)は、基本的に左右相称である。空想上の生きものであっても、左右相称であることが多い。それに対してウニのボディプランは放射相称だ。

 これだけ見た目も動き方も我々とウニでは異なる。だが、実はウニは昆虫などよりもはるかにヒトに近い生物なのである。