田原 いま韓国の景気は悪化していますよね。特に雇用がメチャクチャです。だから韓国の若い人が「日本で就職したい」と言い始めている。
武藤 昔は韓国の人たちは、「大嫌いな日本ために働いてやるんだから少し給料を多くよこせ」っていう態度でした。それがいまでは日本の企業で働きたくてしょうがなくなっている。
「どうにも手の付けようがない大統領」
田原 それに、韓国政府が日本にケンカを売っているっていうのに、日本では韓国からのインバウンドがどんどん増えている。
武藤 観光客も去年は750万人と、中国に次ぐ多さです。地震や集中豪雨の影響で伸び悩んだ時期もありましたが、その影響がなかったら中国と1位を争っていたはずです。
田原 文在寅さんは日本にケンカを売っているけれど、韓国の国民は日本を嫌いじゃないんですよね。
武藤 基本的に韓国の人たちは日本のことが好きです。
でも、徴用工裁判の判決にあったように、日本企業の資産差し押さえなどがあったら、日本政府としても黙っているわけにはいかない。でも判断を、日韓間で設置する仲裁委員会や国際司法裁判所にゆだねるようなことになれば、韓国に分が悪い判断が下されるかも知れないので、彼らはそんなことは絶対に認めません。
そうなると、次なる手段として浮上するのが、韓国に対する経済的な圧力です。具体的には、関税をかけるとか、あるいは半導体産業には不可欠なフッ化水素の輸出を止めるとか、そういう話になってくる。
しかし、ここで考えなくてはならないのは、第二次大戦後、国交正常化から50年の歳月をかけて、やっと韓国の一般の人々が日本を好きになってくれているという現状です。もしここでフッ化水素の輸出を完全に止めて、韓国経済の命脈を断つようなことをしてしまえば、日本に親しみを感じ始めた韓国の人々は何と思うでしょう。戦前日本は軍事力で韓国を支配した、今度は経済力で痛めつけるのか、と思ってまた反日になっていくはずです。それは決していいことじゃない。
だから文在寅大統領に対する対応と、未来の日韓関係、これを分けて考えないといけない。
田原 その考え方はとても大事ですね。
武藤 じゃあ韓国に対してどうしていけばいいのか。今度、北朝鮮に対して国連の制裁が出ましたよね。だけど韓国はその制裁破りをしている可能性があります。例えば、昨年9月に、文在寅氏が平壌を訪問したときに、韓国から飛行機が4機、平壌入りしています。通常、首脳外交のときには首脳が乗る飛行機と予備機の2機が飛ぶのです。しかしこの時は、それ以外に2機飛んでいる。白頭山に行くときに必要な防寒具を運んだ、なんて説明をしていますが、そんなもののために飛行機が2機も必要なわけがない。実際に何が積まれていたかなんて分からりません。こんなかたちで、韓国は多くの制裁破りをしている可能性が極めて高い。
ですから、韓国がそういう制裁破りをしている証拠を掴んで、それについて国連で「韓国はけしからん」と徹底的に糾弾すればいいと思う。それが文在寅氏にとっては一番堪えるはずです。
田原 繰り返すけど、問題は、日本とケンカして、文在寅さんにはメリットがないと思う。
武藤 ないですよ。でも、それが分からないのが文在寅政権の問題。とにかく、彼は国益を理解しない人なので日本は困っているんです。文在寅氏が韓国の国益をきちんと理解している人なら、安倍総理だって日韓関係でもっとやりようが出てくるんですけどね。
田原 国益を理解していれば、ケンカするよりも仲良くしたほうがいいに決まっている。
武藤 そうなんです。それが分からない文在寅政権は、もうどうにも手のつけようがないというのが偽らざる実感です。
(了)