チュニジアから始まった民主化デモは、エジプトのムバラク政権を倒し、その勢いをかって中東や北アフリカ全体に飛び火している。カダフィ大佐が率いるリビアでは、軍事衝突に発展、泥沼の内戦状態になりつつある。

 単に民主化運動という枠を超えて、イスラム教徒の宗派争いにも発展しそうな勢いで、簡単には解決の糸口が見つかりそうにない。こうした中、歴史的にこの地域と極めて密接な関係のある米国と英国はどのような対応をしているのだろうか。

 中東・北アフリカ地域は圧倒的な石油資源を抱える地域であり、この地域の混乱は世界経済に大きな影響を及ぼす。既に石油価格は市場最高値を目指して急騰し始めている。またアジアの独裁国家、中国へ飛び火すれば、その影響は計り知れない。

 第4回目となる今回は、米国と英国を代表するメディアがこの中東問題をどのようにとらえているのかを話し合った。

中東問題で、米英メディアがともに自国政府を批判

川嶋諭JBpress編集長、小野由美子WSJ日本版編集長/前田せいめい撮影今回は中東情勢についてWSJ日本版編集長の小野由美子さんと話し合った
(撮影:前田せいめい、以下同)

川嶋 今回の中東問題は日本ではあまり盛り上がっていない気がしますが、世界史を変えるような出来事だと思います。

 実際、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)とエコノミスト誌は中東関連の記事が非常に多くなっています。米国ではどうなんでしょう。

小野 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)も2週間ほど、1面に中東関連の記事が入らない日はありませんでした。

 ここには大きく言って2つの問題がありますよね。1つは民主化の動き、もう1つは原油高をはじめとした経済的な影響です。

川嶋 民主化について、私が注目しているのは中国です。FTは中国には波及しそうでしないと書いています。10%以上の経済成長を維持していることもあって、国民の大半は生活が上向いていることを実感している。

 共産党の一党支配が崩れるとしたら、民主化運動よりも、インフレや景気後退が引き金となる社会不安が原因になる可能性が高いと指摘しています(「中国の指導者たちが神経過敏になる理由」)

小野 確かにいまのところ中国に飛び火して一気に盛り上がるという感じではない。ただ、中国政府は外国メディアに対してとてもナーバスになっていますね。WSJの記者も行動を制限されています。