国民が、地域や自治に能動的に関わるようになるには、何が必要か。

(篠原 信:農業研究者)

 4月の統一地方選では、全41道府県の道府県議選で計612人の無投票当選が決まったという。無投票で決まった議員の数は、総定数の26.9%にも上り、4人に1人が、選挙もなしに議員になったことになる。投票率も過去最低で、市長選では47.50%だったという。このため、「民主主義の危機」という記事も出るほどだった。

「民主主義の危機」といえば、2005年にスウェーデンに行ったとき、「前の国政選挙で投票率が90%を割り、民主主義の危機だとずいぶん心配された」という話を聞いたのを思い出した。日本では、2017(平成29)年10月の衆議院議員選挙で53.68%だったから・・・うん、危機が底割れしたら、なんと呼べばよいのだろう?

「自己効力感」が愛着を生む

 私は4年前に、「『指示待ち人間』はなぜ生まれるのか?」という一文をtogetterに投稿したことがある。当時、多くの企業で若者が指示待ち人間で困るという声が高まっていた。経営者の中には、「自分の頭で考えられる人間なんて、一握りなんだよ。ほとんどの人間は自分で考える能力なんてないんだよ」と、ちょっと自暴自棄な悲鳴を上げていた人もいた。

 そんな中、子育ての悩み相談をきっかけに、まとめてみたものが上記の一文だ。多くの人の琴線に触れたらしく、現在、56万件を超える閲覧数となっている。

 それを読めばお分かり頂けるように、「指示待ち人間」になってしまうのは、「自己効力感」を失うからだ。自己効力感とは、自分が関わることで何らかの変化を与えることができた、という「能動感」のことだ。ところが上司があれこれ指示を出してしまうと、指示以外のことをしたときに叱られるものだから、考えることが面倒くさくなって、次第に考えなくなり、指示待ちの姿勢になる。

 しかしこれとは逆に、上司が部下の意見を引き出し、「お! いいね! それ、やってみなよ!」と言ってもらえると、考えることも楽しくなる。自分で考え、自分の手でやり遂げたことは、愛着が湧く。